2014年に始まったイスラエル軍の大規模な空爆と地上侵攻による爪痕が今も深く残るパレスチナ自治区「ガザ」。現在も同軍によるパレスチナ側のデモ隊への銃撃などで死傷者は何千人にも及ぶ。そんな苦しい状況において、現地の女性たちが脈々と受け継いできたのがパレスチナの伝統刺繍だ。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によって立ち上げられたパレスチナ刺繍プロジェクト「Sulafa」をパレスチナ・アマルの北村記世実さんは、2013年に団体設立以降、たった一人で、ガザの女性達への支援を行ってきた。

アメリカがUNRWAへ搬出金を半分凍結すると発表した以降、「Sulafa」も苦境に立たされている。「ガザの女性を刺繍難民にさせない」と意気込む北村さんへ話しを聞いた。(聞き手=Readyfor支局・吉田 梨乃)

※北村さんは、クラウドファンディングサービス・Readyforによる国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」でクラウドファンディングに挑戦中です!パレスチナ刺繍プロジェクト「Sulafa」の日本人向けの新商品の開発により、パレスチナの女性を支援するため 200万円の寄付の呼びかけを行っています。寄付の受付は5月30日木曜日23時まで!<詳しくはこちら(https://readyfor.jp/projects/unrwasulafa)から>

パレスチナ・ガザ地区の女性たち

――活動を始めたきっかけについて教えてください。

18年前に大学時代の友人からガザ地区への医療系のボランティア活動に誘われたことがきっかけで、現地でパレスチナの人々の明るさに魅了されたことから始まります。しかし、パレスチナの状況は悪化する一方でビジネスを通して貢献したいと思い、2013年にパレスチナ・アマルを立ち上げるに至りました。

Readyforでクラウドファンディングに過去2度挑戦させていただいたのですが、サポートをしていただける方々の思いに支えられると共に現地の作り手の女性の魅力的な刺繍をしっかりと日本の方々の手元にお届けしなければと思い、それが活動の原動力となっています。

――支援により、パレスチナの女性たちにどのような変化がありましたか。

以前のクラウドファンディングの際に、ブランドブックを作成したのですが、そのおかげで注文も多く入るようになりました。現地の女性達もそれを見て大変喜んでおりました。また、見やすい形で商品をアピールしたことで需要を高めることができたと思います。

今まではフェアトレードショップやNGOの出店のみで、一般に流通する機会が少なかったですが、百貨店の期間限定ショップやギャラリーにて販売を始め、実際に手にとって刺繍の良さをより多くの方に感じていただけるようになったと思います。

「パレスチナ刺繍なんてあるんだ」「初めて見た」という方々がほとんどで、クロスステッチの刺繍が素敵だという反応が多いのも、その魅力が伝わっている証拠だと自負しております。

パレスチナ刺繍で作られた製品

――これまでガザへ訪問したときの様子について教えてください。

私は1999年と2001年、2017年の3度ガザに訪れました。1999年はノルウェーからの修学旅行生が来るほど賑やかでしたが、2001年には第二次インティファーダという抵抗運動が行われていたので文字通り紛争地でした。

2017年に訪れた時は、10年間完全封鎖が行われていたため、2001年から全く風景が変わっていませんでした。銃撃を受けていた後や紛争の爪痕があちこちに見受けられて、状況の変わらなさに心が痛みましたね。ガザ地区は、流通が制限されているので情勢によって左右されてしまうというのが今でも支援をする上で難しい点です。

――トランプ政権がUNRWAの搬出金を半額凍結しましたが、現地にはどのような影響がありましたか。

状況は悪くなる一方です。UNRWAの活動は大切なもので、凍結されることで影響はあらゆるところに見られると予想されます。UNRWAの半額凍結の影響、その財政難のため、視覚障をもつ子供たちの幼稚園が8月に閉園するそうで(国連広報センター)、悪影響の兆候が見え始めている現状です。

拠出金が半分凍結し続けると、パレスチナの女性たちが職に就くということ、子供の面倒を見ることの難しさに「刺繍難民」に再び彼女たちがなってしまい、彼女たちとそして次の世代の可能性さえも狭めてしまいます。

彼女たちの持っている代々引き継がれた伝統技術を次の世代にも繋げるためにも、ガザの女性たちの可能性を引き出し、支え続けるためできることをしていかなければと思っています。

パレスチナ刺繍を日本人向けに販売

――プロジェクトへの意気込みをお願いします。

「需要を高めていく」ことが私が最大限できることです。「かわいそうだから」ではなく「素敵な商品だから」と刺繍の良さを感じて購入して欲しいです。

よりお客さんのニーズに応えるために日本人向けの商品を支援者さんたちと考えるため、商品開発のためのアンケートをとるなど工夫をしていく予定です。UNRWAヘの搬出金が半分凍結された状態でも日本国内で魅力を発信し、需要を増やすことで女性たちの仕事を増やすのが私の役目であり、使命であり続けることは変わりありません。

アメリカのエルサレムへの大使館移転により起きたパレスチナ人のデモへの攻撃により多くの死傷者が出る中、ガザの現状をより多くの人々へクラウドファンディングを通して知っていただける「伝える」ということにも大きな意味があるはずです。

私は自分のできることとして、プロジェクトを成功させてこれからもガザの女性と共にあり続けます。

北村さんは、パレスチナの女性を支援するために200万円の寄付の呼びかけを行っています。寄付の受付は05月30日木曜日23時まで!<詳しくはこちら(https://readyfor.jp/projects/unrwasulafa)から>応援お願い致します。


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