福岡ソフトバンクホークスの最年長投手である和田毅(37)はプロ3年目の2005年から投球数に応じてワクチンを寄付する取り組みを行ってきた。これまでに寄付したワクチンの本数は約50万本に及ぶ。和田は、「寄付を特別視していない。素振りやキャッチボールと同じで、当然の感覚で行っている」と話す。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

寄付についてのインタビューを受ける和田選手=12月4日夜、都内で

――高校生のころからチャリティーへの関心を持っていたとのことですが、関心を持ったきっかけを教えてください。

和田:中学生の頃、赤い羽根共同募金の募金活動をすることがあって、このお金はどこに行くのだろうと疑問に思ったことがきっかけです。その当時は新聞で調べたり、先生に聞いたりしていましたね。

高校、大学と進学するに連れて、寄付を行うスポーツ選手の話をよく聞くようになり、社会人になったら何かしらの寄付活動をしてみたいという思いが強くなりました。

プロ野球の世界に入ると、井口資仁さんや川崎宗則さんなど実際に寄付活動を行う選手を目にして、自分も何かできないかと探していました。

――今は、「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」を通じてワクチンの寄付を行っています。ワクチンへ関心を持ったのはなぜでしょうか。

和田:最初はDMを頂き、世界では一日数千人分のワクチンが足りないことを知りました。そこでワクチンの寄付ができないか球団に相談したら、「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」を紹介してもらいました。

――試合で投げた球数に応じてポリオワクチンを寄付する独自のルールを設けています。

和田:はい、1球ごとに10本、勝利したら20本、完投勝利したら30本という「ぼくのルール」を作りました。ほかにも、日本シリーズの優勝や獲得したタイトル数によっても加算する仕組みです。

シーズンの成績によって寄付する本数が決まりますので、毎シーズン、昨シーズンよりも多く寄付できるように励んでいます。ただ、昨シーズンは怪我でまったく試合で投げることはできなかったので、本数を決めて寄付しました。

現地に行ったことはまだないのですが、委員会の方からは、現地にいる赤ちゃんの写真をいただきます。この赤ちゃんは自分が寄付したワクチンのおかげで生きているのだと思うとうれしくなり、こちらが勇気をもらっています。

ぼくらプロ野球選手は人よりも注目される立場にいますので、社会問題を発信する拡声器としての役割もあると思っています。ぼくはワクチンですが、世の中には様々な問題があり、選手によっても取り組んでいる活動が異なります。

寄付した額などが注目されがちですが、その活動を通して「状況を知ってもらう」ことが最も大切なのかと思っています。

もちろん、絶対に寄付をしないといけないとは考えていません。状況を知った上で、あなたはどう思うのか、世の中に議論を巻き起こしたいです。

――米国の個人寄付額(約27兆円、参考「寄付白書 2015」)は日本の個人寄付額(約7400億円)の35倍です。メジャーリーグではシーズン中の試合が始まる30分前でも、球場に子どもを招き入れるなど、地域社会との距離が近いです。チャリティーをする選手も多くいます。メジャーへ行ったことで寄付への意識は変わりましたか。

和田:寄付も地域の子どもと触れ合う社会貢献活動も、特別なことだとはまったく思わなくなりましたね。試合前に素振りをする感覚と同じです。たとえ登板前でも、子どもが球場にいたら、自然とキャッチボールをしますし、寄付していることを特別なことだとは思っていません。そういう思いでこれからも寄付を続けていきたいです。

NPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションは12月4日、ファンドレイジングイベント「BLF Charity Talk 2018」を開いた。同イベントでは、和田選手の呼びかけで、千賀滉大選手(福岡ソフトバンクホークス)、館山昌平選手・畠山和洋選手(東京ヤクルトスワローズ)、則本昂大選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)、吉田正尚選手(オリックスバファローズ)が集まり、寄付をテーマにトークイベントを行った。同イベントには150人が来場し、参加費の一部は、日本スポーツ界の発展を目指す学生への支援に充てられた。Syncableを通じて、オンラインでも寄付を集めている。


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