児童養護施設や乳児院などで暮らす子どもを新聞紙面で紹介し、出会いの場をつくる団体があります。養子縁組した後も、養親子への支援を続けます。27年前、団体を通じて今の養親と出会った男性は、「養子を迎えることは特別なことではなく、こんな家族のかたちもあるんだと知ってもらえたら」と話します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

59年にわたり、毎週紙面で子どもを紹介、これまでに1200組の養子縁組を手伝う

毎日新聞「あなたの愛の手を」コーナー。こちらは実際に、団体を通じて養親と出会ったたかのりさんが紹介された時の紙面

行政と連携しながら、児童養護施設や乳児院などで暮らす子どもを毎日新聞の「あなたの愛の手を」欄で紹介し、出会いの場をつくる活動を続けてきた公益社団法人「家庭養護促進協会 大阪事務所」。

「あなたの愛の手を」は、1964年5月5日に初掲載され、以来59年、毎週一人ずつ、これまでに2923回(2023年1月23日現在)子どもを紹介し、1200組弱の養子縁組を手伝ってきました。

「私たちの活動拠点である大阪は、養子縁組を必要とする子どもと養親希望者とのマッチングに非常に積極的に取り組んでいる自治体です」と話すのは、ケースワーカーで家庭養護促進協会スタッフの山上有紀(やまがみ・ゆき)さん(51)。

「限られた地域の中だけではなかなか、子どもと親となる養親さんとの出会い自体がありません。民間団体である私たちが間に入って子どもたちを新聞で紹介するというかたちをとることで、全国から里親希望者を募り、マッチングができるようになっています」

3歳の時、団体を通して養親に出会ったたかのりさん(30)。山上さんは、たかのりさんと養親との出会いから成長をずっと見守り続けてきました。

「養子を迎え入れた後、どのような親になりたいか」

たかのりさんと養父母さんが初めて対面した日。「養父母さんにとっては、”我が子”とようやく会える、待ちに待った瞬間です」

「養子を希望していたたかのりくんのご両親は、紹介で私たちの団体を知り、足を運んでくださったのが最初でした」と山上さん。

「今、養子を迎えるには二通りの方法があります。一つは、定められた研修を受け、条件をクリアして児童福祉法上の『里親登録』をして養子を迎える方法。もう一つは、民間の養子縁組あっせん機関を通じて養子を迎え入れる方法です」

「今、全国には民間の養子縁組あっせん機関が20数団体あります。それぞれの団体が独自に里親の条件を設けています。私たちは里親登録のための研修なども大阪府や大阪市からの委託事業として行っていますが、当時、たかのりくんのご両親はすでに里親になるための研修等を済ませて里親登録をしていらっしゃいましたので、面接からのスタートでした」

養親希望者対象の研修の様子。先輩養親の体験談を聞いたり養子縁組の手続きについて学んだり、グループワークをしたりする

「面接や調査では、ご夫婦がそれぞれどのような家庭で育ち、養子を迎え入れたらどのような家庭を築きたいかといったこと、夫婦関係や親族関係、経済状況などさまざまなことを伺います。『なぜ養子を迎え入れたいのか』という点は、特に掘り下げて伺うようにしています」

「面談や調査を経て、児童相談所の了解も得て、マッチングが決まると、その子が生活している施設に会いに行き、関係作りをする『実習』が始まります」

「ごはんにふりかけをいっぱいかけられるのが、嬉しかった」

「あなたの愛の手を」欄での掲載にあたり、施設で取材を受けた日のたかのりさん。「初めて会う新聞記者さんにも、かわいらしい笑顔を見せてくれました」

養親に初めて出会った時、たかのりさんは3歳。「当時のことをわりと鮮明に覚えている」と話します。

「僕は、普通の民家に子どもたち何人かと先生が暮らす、小さなグループホームで育ちました。ある日突然、知らない大人、つまり今の両親がやってきて、たくさん遊んでくれて。次に来た時にはおもちゃもいっぱい持ってきてくれました。『なんで僕と仲良くしようとするんやろう』とは思いましたけど、『いっぱい遊んでくれるし、まあいいか』という感じでした」

「二人がとりあえずやさしくしてくれて、『この人たちがお父さんとお母さんになるんや』ということをなんとなく理解しました。家に行って、『ここにずっとおるんやな』と思ったことを覚えています」

「施設でも自由ではあったんですが、ごはんにちょっとしかかけてもらえなかったふりかけを、家ではいっぱいかけられるのがめっちゃ嬉しくて、いっぱいかけました。偏食はすごかったですね。ジュースは、朝はこれ、昼はこれ…と、近所の自販機のジュースを全部押しました。小学校に入ってからもかなり偏食でした」

ふりかけを山ほど買ってもらい、袋をたくさん開けて、ごはんにかける3歳の女の子。「こんなことしても、怒らへん?」と養親に問いかけているようです」

「養子を迎え入れた時、偏食や過食はよく見られる行動です。好きなものだけを思いっきり食べたいという側面と、『こんなに要求しても受け入れてもらえるのか』という『試し行動』の側面があります」と山上さん。

「試してやろう、っていうのは無い。『僕をほんまに認めてくれるんか。これでもいいんか』というのは、考えてそうしてるのではなくて、本能だったと思う」とたかのりさんは振り返ります。

「家庭に来たら、0歳からの育て直し」

養父母に引き取られたばかりの頃のたかのりさん。「良い子でいる時は”たかちゃん”、わがままを言ったり悪いことをする時には”のりくん”が出てきたと、自分で言っていたそうです。これは、”のりくん”かな?」

「たかのりくんが養子になったのは3歳。年齢としては3歳ですが、養親さんの家庭に入るのは初めて。何歳で迎え入れたとしても、家に来た時が0歳です。養子を迎える方には、『0歳からの育て直し』の大切さを伝えています」

「試し行動でどんなことをしても、『命に関わること以外は全面受容しましょう』と。生まれたての赤ちゃんには、しつけをしませんよね。赤ちゃんが泣いたら、『ミルクかな、おむつかな』と気にかけて、赤ちゃんの要求を受け止め、不快を快にするために動きますよね。それとまったく同じです」

「家に来た時が0歳からのスタート。何をやってもオッケーだよ、それでいいよとまず受け入れてあげること。施設では、複数の大人で子どもを見ます。それではなかなか育てることが難しい愛着関係を、家庭の中で、『この人は、自分に応えてくれるんだ。自分を気持ち良くしてくれる人なんだ』と感じることで、関係を作っていくことが大切です」

小学2年生の時に書いた「お父さんお母さんに聞きたいこと」。「ぼくのいえにきたときはどんなに大きくなっていたのですか」、2年生の時には、すでに自分が「養子」であることを理解していた

「子どもからすると、養親に嫌われるかもしれないリスクを負ってまで、『こんなことしても、自分を捨てへんのやな』と全力で試し行動をしている。子どもなりに、大人の本気度を確かめようとしているんですよね」

「養子になった後、赤ちゃん返りして、おむつが取れていたのにまたおむつになったり、自分でごはんが食べられていたのに、食べさせてもらったりする子もたくさんいます。たかのりくんも、お母さんのおっぱいをずっと触っている時期があったそうです。そんな時も、『赤ちゃんに戻ったと思って対応してやってほしい』という話をします」

「ほんまの親でもないくせに」。
思春期にぶつかる壁

お気に入りのお寺に、家族でお出かけ。「他の場所はすぐに飽きたけど、ここが好きで、長い時間いました」(たかのりさん)

小学6年生の時、暮らしていた施設を訪れたというたかのりさん。

「懐かしいから行ってみたいと思い、山上さんにも一緒に来てもらいました。そこで、僕のことを覚えてくれていた先生たちが、僕は知らない名字で僕を呼んだんですね。それが衝撃だったことを覚えています」

「今の名字に変わったということは知ってたけど、前の名字を具体的には知らなかったから、急にリアルになったというか。改めて『養子として家に来たんやな』と感じた出来事ではありました」

思春期に入ってからは、どうだったのでしょうか。

「親に嫌なことを言われたりした時に、『うるさいな。ほんまの親でもないくせに』と言い返すことはありました。親からは『産んではないけどあなたの親やから、こういうことも言うねんで』と言われましたね」

「関係性ができているからこそ、言える言葉かもしれないですよね。養親から『じゃあ出て行き』と言われると思ったら、『ほんまの親でもないくせに』なんて言えないですよ」と山上さん。

「ケガが多く、いつもばんそうこうや薬が必要でした。でも私たち夫婦は、そんなところもかわいいと思いました。寝顔をいつまでも見ていました」とたかのりさんのご両親

「思春期の悩みは、養親さんからもよく聞かれます。養親さんはここで、もう一度試される。思春期の時期に、輝ける麗しい養親子関係なんていうことは全然なくて、『ほんまの親でもないくせに』みたいなことを言われた時に、養親はひるまず、揺るがずに『産んでないけど、お前の親やぞ。なんか悪いか』ぐらいに構えて、全力でぶつかっていいんです」

「実は一度、高校卒業を間近に控えたたかのりくんが、『実の親を探したい』と事務所に押しかけてきたことがあるんです」と山上さん。

「たかのりくんが最も知りたがったのは、『なんで、今の親になったんや』ということでした。出会ったいきさつや、たかのりくんを迎え入れるためのご両親の経緯を話すと、『親も大変やったんやな』とちょっと納得して帰っていきました」

「僕と出会うまでに、両親はものすごく時間を費やしていました。それを知って、誰でもよかったんとちゃうんや、って。里親になる研修、面接、調査…すべてのプロセスを、僕と出会い、家族になるという一心でやってきてくれたんやというのがわかったんです」とたかのりさん。その後、実の親を探すことなく今日まで来たといいます。

「何かきっかけがあればしてもいいんでしょうけど、僕は今、満足しているし、特に知りたいとも思ってないんです。振り返ったらいろんな波があったけど、僕を育ててくれた親は、父と母の二人だけなので」

「養子とは、生まれ持った才能」

養親向けの研修で、山上さんと共に、自身の体験を語るたかのりさん

養子であることをどう感じているのか、たかのりさんに尋ねました。

「『生まれ持った才能』でしょうか。今は、よかったと思っていることです。わざわざ掲げることでもないけど、隠すことでもない。知ってもらって、『そんな人もいるんだ』『こんな家族のかたちもあるんだ』って興味を持ってもらえたら嬉しいですね」

「養親の出会いから成長までをずっと見守ってくれた山上さんは、僕のほとんどを知っていて、何を言っても受け止めてくれるんやろうなという人です。僕は当事者として気持ちがわかるところがあるので、養子を迎えて育てている親御さんには、堂々と『あんたの親やで』って言ってもらって何も悪くないって伝えたいと思っています」

「今日もね、ここにくる時に、母親が『中にちゃんと服は着込んでるんか』『財布は持ったか』って、すごい過保護なんです(笑)。一緒に住んでいる時はうるさいなと思っていたけど、一人暮らしをした時に、家族のありがたさを身に染みて感じました。実は今月、一緒にいたいと思った、尊敬できる相手と結婚したんです。両親も喜んでくれました」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は1/23〜1/29の1週間限定で「家庭養護促進協会 大阪事務所」とコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、養親子のために団体が毎月開催している親子サロンや、秋の運動会などの開催費として活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(左・700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

「まだまだ日本の社会では養子がマイノリティーである中で、こういった場所があることで、子どもたちが『自分だけが養子じゃないんだ』と感じてもらえたら」(山上さん)

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、星を照らし、包み込む太陽と月。どんな時も子どもを見守る温かい目を描き、何があっても絶えることない家族の絆を表現しました。

JAMMINの特集ページでは、たかのりさんと山上さんへのインタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

親を必要とする子どもに、新しい家族を。養親子を見守り、支える〜公益社団法人家庭養護促進協会 大阪事務所

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は7,500万円を突破しました。

ホームページはこちら
facebookはこちら
twitterはこちら
Instagramはこちら