若者の自死を防ぐために大人たちは何ができるのか。2013年3月にNPO法人自殺対策支援センターライフリンク(東京・千代田)の清水康之代表にインタビューした記事を再掲します。


政府が閣議決定した2012年版「自殺対策白書」では、世代別で見たときに20代の自死死亡率が最も高く、雇用情勢の悪化やいじめの深刻化が背景とされている。NPO法人自殺対策支援センターライフリンク(東京・千代田)の清水康之代表に若者の自死を止めるために、私たちができることは何か聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田真隆)

清水康之代表


原因の根っこには、自己の空洞化

——若者の自死が増加しています。どのような原因があるとお考えですか。

清水:私たちが調査したところ、若年世代は平均4つくらいの要因から起きていると判明しています。自死率が高まるときは、生きることの促進要因よりも阻害要因が高いときです。

促進要因とは、将来の夢や生きるモチベーション、信頼できる人間関係などのことです。阻害要因とは、生きることを阻むものです。いじめ、就職活動の失敗、借金、過労などです。

現在の日本社会全体が生きることへの促進要因を持ちづらく、阻害要因を持ちやすい状況にあります。特に、促進要因と阻害要因のアンバランスさが顕著に現れているのが若者の特徴です。

若者は他の世代と比べると、生きることへの促進要因が非常に低いです。自尊心が低いと言われていますが、小さい頃から周りの目におびえながら生きていかざるを得ないからです。

クラスでいじめの標的にされないように、コミュニティーの中で排除されないように考えながら暮らしています。そして、先生や周りの人たちから高い評価を得ようとがんばります。大人の顔色を伺いながら、周りの目におびえながら生きているのです。

このように、無意識のうちに同調圧力を感じながら生きていると、自己が空洞化してしまいます。内発的な行動を極力押し殺して、周りからどう見られたいのかを第一に考えます。気付いたら、鎧は着飾っているが、中身は空っぽのまま成長していくことになります。

そういう状況の中で、就職ができず、社会に居場所が見つからないと、もともと促進要因が低いので、阻害要因を強く感じやすくなるのです。かつての時代は、自己が空洞化したままでも、仕事を通して、やりがいを感じ、支えられていた人もいました。

しかし、今の若者たちは職に就けず、社会の中で居場所や出番を見出すことが困難な状況に陥ります。なので、実社会に出る前に自己を満たしておかないと、社会に出たとたんにおいやられてしまいます。

ですから、自死する原因は、単純に就活の失敗や、いじめなどではなく、根っこに自己の空洞化があるのではないかと思っています。

「自分も失敗した。でも、生きているよ」と、大人が弱みを吐露すること

——自己が空洞化している若者に私たちは何ができるでしょうか。

清水:ボランティアや地域活動などで、若者たちに居場所や出番を作ってあげることも重要なことです。かつては、お祭りがあり、誰にでも役割や居場所がありましたが、今はどんどんそのような機能を持った伝統行事がなくなっています。若者が自分の出番だと思える機会を、戦略的に作っていくことが重要なのです。

そして、若者たちの内面に耳を傾けて上げることです。「こうしなければいけない」という同調圧力におびえている若者たちは多いですから、大人から自分の弱みを吐露することで、打ち解けやすくなります。

社会は、「強くあれ!」や「失敗したらだめだ!」というメッセージを押し付けてきますが、身近な人にまで押し付けてはいけません。より若者が窮屈になってしまいます。

「社会はそういうメッセージを発信しているかもしれないが、自分は違うよ」と、言ってあげてください。「自分も失敗してきた。でも、こうやって生きているよ」と、大人が弱みや過去の失敗談を隠さずに語ることが大切です。若者たちにリアルな「生き方」や「価値観」を実感してもらう機会を大人たちから作ってあげることです。

今の社会で、同調圧力や生きづらさや息苦しさを感じることはまっとうなことです。まさに、時代をしっかりと感じている証です。辛さを分かっているからこそ、他の人の思いを分かち合うことができます。

辛さはずっと続くものではありません。社会は変わるし、変えていけるものです。社会に違和感を持った人がつながっていけば、社会は変えていけるものです。

今、悩んでいる若者は、困難な中でも変革していこうと向き合っている大人たちをよく見ていてほしいです。そこに加わり一緒になって物事を変える活動を行ってもいいでしょう。若者たちに、「一緒に生きいこう」と声をかけることができる大人が現れることを期待しています。


NPO法人自殺対策支援センターライフリンク

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