リジョブグループは、美容・ヘルスケア業界の求人メディア事業、集客・予約システム事業で躍進しているが、その根底には社会課題を解決したいという熱い想いがある。それでは、社会課題を解決する仕事とは何か、また通常の仕事とは何が違うのか。(オルタナ編集委員・高馬 卓史)

リジョブグループのリザービア社の植田美保執行役員(左)と青林寛執行役員 マーケティングDiv部長

経済性と社会性の二兎を追うリジョブは、美容・ヘルスケア業界の求人メディア事業において、採用成果報酬ウエイト型(安価な掲載料金+成果報酬の組み合わせ)の低コスト料金体系を構築し、業界の採用コストを従来の半分以下に抑えることに成功した。このシステムがサロンオーナーに支持され、サービスを開始して、わずか5年で業界トップクラスの地位を築き上げた。

同社が展開する事業は実に多彩だ。美容・ヘルスケア領域だけでなく、2015年からは介護領域の採用支援事業も行う。加えて、キャリア支援や途上国での自立支援も手掛けている。

創立10周年を迎えた2019年には、リジョブ式SDGsを宣言。それぞれの事業を「環境」「経済」「社会」の3つに分類し、SDGsで定めた17目標との紐づけを行った。土台となる「組織創り」とともに、今後も、「経済性」と「社会性」の両軸を追求していき、SDGsの達成に貢献していく。

創業10周年を機に策定したリジョブ式SDGsマップ、事業を環境、社会、経済の3分野に分けた

新卒一期生、利己から利他へ

同社の創業期に新卒一期生として入社した植田美保氏は、自身の原点を「中学生の頃、初めてひとりで髪を切りに行った時に、とても衝撃を受けました。美容室で自分が想像している以上に素敵にしてもらったことで自信がつき、自分のことを好きになれました」と振り返る。

新卒一期生で入社した植田氏

植田氏はその体験から「髪を切るという一つの行為であっても、人の心を豊かにすることができる素晴らしい仕事だということを、美容を通じて感じました。リジョブの理念にも合致していますが、個人的にも心の豊かさが大事だと感じています」という。

仕事に全力を注ぎ、営業トップを経てマネージャーになり後輩や部下を持った時に、「いかに自分が成⾧し、成果をあげるか」から「どうすればメンバーや関わる人が、望むものを手に入れられるか」へ、考え方が変わったという。

リジョブでの仕事を通して矢印が明確に自身から外側に向き、「関わるすべての人に何らかのプラスの影響を与えられる人になりたい」というライフビジョンを確立した。この「利己から利他へ」の精神こそ、社会課題解決の仕事をする上で重要だ。

フィリピンでCSV推進事業「咲くらプロジェクト」を立ち上げる

鈴木一平社長から、「CSV推進室長をやってみないか」と打診を受けたのは2014年。社会課題に事業で取り組むCSV(Creating Shared Value)は未知の分野であったが、植田氏は、「業界や国境を越え、より多くの人の人生を豊かにしたい。やるからには、持続可能な形にしたいと、胸が高鳴りました」と振り返る。

植田氏が主導したのは「咲くらプロジェクト」。フィリピンでセラピスト養成講座を開き、現地の若者に雇用創出の機会を与える取り組みだが、形にするまでには長い道のりがあった。

日本で美容求人サイトを運営している会社がなぜフィリピンなのか。その理由を問うと、「課題を知ってしまったから」と植田氏。プロジェクト誕生のきっかけは、フィリピンの貧困層に美容師がカット技術を教えていることを紹介した新聞記事と、そこに載っていたNPO団体アクションとの縁。

当時、「フィリピンの貧困層の方々に、日本の技術とサービスを伝えることで雇用につなげ、心の豊かさあふれる社会を創る」「リジョブだから出来ることを通して、持続可能な社会貢献を形にする」という考えだけはあったが、実際に何をやるのかは決まっていなかった。

「正直、右も左も分からなかった」と明かす植田氏は「フィリピンの今」を掴もうと、まず町を練り歩き、人々の声を聞きながら「現地の人々が、人生の選択肢を広げるために本当に必要なもの」を探り当てるため仮説検証を繰り返した。貧困を、身を持って理解するため、1日1ドル以下で暮らす人たちと寝食を共にしたこともある。

現地の子どもたちと触れ合いながら事業を構築していった

「家族みんなで狭い部屋に雑魚寝しました。貧しかったけど、みんな楽しそうに笑うんです。豊かさとは何か考えさせられましたし、美容の力で彼らに何を提供できるのか何度も何度も自問自答しました」と話す。試行錯誤を経て生まれたのが、短期間で技術習得が可能で、フィリピンにおいて雇用につながる可能性の高い「無料で受けられるセラピスト養成講座」だった。

やるべき事が明確になり、事業としてしっかりと運営していくために、25年以上同国で活動するNPO法人アクションをパートナーとしてサポートを受けながら、事業の構築に取り組んだ。

貧困層500人へ美容技術を提供

そうして、2015年7月、ついにフィリピン・オロンガポ市で、無料でセラピストの技術やサービスを学べる一期3カ月間の養成講座が始まった。リジョブが美容・セラピスト業界で培ってきた繋がりやアクションとの縁など、人と人との結び目から生まれたプロジェクトだ。

貧困層に、日本の技術やサービス力、ホスピタリティの素晴らしさを学ぶ機会を提供する養成講座は好評を得て、事業の拡大とともに、植田氏がフィリピンに訪れる頻度も上がった。「2カ月に1回」が「毎月」になり、2017年にはついに現地法人を立ち上げ、「移住」を決意する。

セラピスト技術を学んだ卒業生は500人を超えた。フィリピンにはセラピストの国家資格はないが、卒業生には民間資格を得られる受験の権利が与えられ、その先の雇用につながっている。

セラピスト養成講座では技術だけでなく、日本式の接客サービスの基礎も教える

現地では講座の企画運営とともに、運営資金を捻出するための新規事業を推進していたが、おりしも、リジョブグループとして新たなチャレンジを行うタイミングと重なり、2019年に現地法人の撤退を決断。咲くらプロジェクトを任せられる頼もしい後輩も育ち、植田氏は帰国する。

帰国後、植田氏はグループ会社「リザービア」に出向し、執行役員に就任。同社が行うのは美容室の集客支援。雇用支援から「集客」へと舞台を移して、新たなミッションに向けて奔走する日々を送っている。

雇用に加え、集客面から業界が抱える課題を解決

植田氏の出向先であるリザービアには、多様な人材が揃う。エンジニア、シェアハウス運営などを経て、「世の中を変えることを目的にしているスタートアップに関わりたい」という志を持ち、マーケティングマネージャーを務める青林寛氏もその一人。何よりユニークなのが、美容業界に入ったきっかけだ。

友人を助けたことがきっかけで美容業界に入った青林氏

青林氏は、「友人の一人が美容師のアシスタントだったのですが、練習のためのカット・モデルを探すのに困り果てていました。その課題に対して、ITでマッチングすることができないかというところから、美容の世界に入りました」という。当時、500円でカットモデルが出来るシステム構築に関わったという彼は、まさに課題解決から美容業界に入ったのだ。

そして青林氏が関わるリザービアが提供するのは、大手クーポンサイトを介さずにサロンの「自社で集客、予約、リピート強化」を叶える美容サロン向けの予約システム。

「当社では、自社集客ができる予約システムを提供しています。集客は新規とリピートに分かれますが、後者は、LINEで予約してもらうシステムを作っています。新規集客に対しては、Googleパートナーとして提携した『Googleで予約』を始めました。いずれも、美容業界では国内初となる事例です。クーポンサイトを介さずサロンとお客様が直接つながる仕組みを構築していることと、大手プラットフォームとの先行タイアップによる集客力が当社の強みです」と青林氏は語る。

ITを使った自動化を駆使して、美容業界が抱える課題に挑む

その青林氏は、「業界のいびつさ」についてこう語る。「夢を持って就業する人の多い美容業界ですが、18歳から28歳までの美容師の年収は平均280万円にもかかわらず、月の休みは5日間程度。また、平均1日14時間も働いています。その為、離職率も高いのが現状です」。

多忙な美容師が髪を切ることや接客に専念できるように、「システムによって自動化できるものはしていきたい。そうすることで、休みも増えて、労働時間も短縮でき、お客様への還元もできるはずです。そういうシステムを提案し、この業界に携わる方々を応援したいですね」とさらなる社会課題の解決に意欲を燃やす。

課題を知ったからには、関わる責任がある

植田氏と青林氏に共通するのは「課題を知ってしまったからには、見て見ぬふりをせず、自分たちの強みを活かし、そこに関わる責任がある」という利他の想い。リジョブは求人サイトを運営するからこそ「雇用」領域で、かつ関わりのある業界を通し、社会課題解決に取り組みたいと植田氏は語る。

インタビューでは社会課題を解決する仕事のやりがいについて話し合ってもらった

そして、グループにリザービアが加わったことで、「人材採用」に加え「集客」「顧客管理」の面からも業界への貢献が可能になった。「働きづらいといわれる業界でのサロン経営の効率化を通して、社会課題の解決につながっていく。そこに大きなやりがいを感じます」と青林氏は語る。

コロナ禍によって、美容業界は大きな打撃を受けたが、リザービアでは緊急事態を乗り切るための情報を美容室オーナーへ伝える取り組みも行う。「将来的には、店舗に通わなくなった理由を解析して、ファンをつくるための法則をあみだしたい」と頼もしい。

その二人にとって、一緒に働きたい人物とは、「根っこの部分でよりよい会社作りを一緒に楽しめる人。また同じ想いを共有できる人。常に色々なところから情報をインプットして、実行に移せる人」(植田氏)、「他人の成功や幸せのために働ける人。サービスを提供した時が始まりで、その後も常に顧客の課題を解決していこうという長期的な視点に立てる人」(青林氏)だという。

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