老舗出版社である岩波書店が、2013年度卒の社員採用は一般公募ではなく、「岩波書店著者もしくは岩波書店社員の紹介があること」を応募条件にすることを2月2日に発表した。

不景気も影響して、年々内定率は下がり続けている



この制度が発表されるとTwitterなどのSNSで「縁故採用にあたるのでは」などと話題となった。小宮山洋子厚生労働相は「公正な採用・選考に弊害があるという指摘かと思うので、早急に事実関係を把握したい」と述べた。

岩波書店総務部の採用担当者は、オルタナSの取材に対して「今回このような制度を取り入れたのは、数人のわずかな採用人数に対して毎年1000人近い学生が応募をしてくる。採用にかけるコスト削減ではなく、単純に興味本位だけで受けにくる学生の数を減らし、意欲のある学生に出会いたいとの意図からこの制度を取った」と答えた。

企業が雇用する際に、その企業と何らかの関わりがあることを採用の条件とする縁故採用と騒がれている件については「紹介文はあくまで応募条件であり、採用条件とは別のものである。例年通り筆記試験や面接の上、採用を判断するので、紹介文の中身はその後の採用試験の合否に影響しない」と、縁故採用ではないと強く主張した。

しかし、課題もある。岩波書店はOB/OG訪問を受け入れていない。岩波書店とのつてがない学生には厳しい対応だ。さらに東京にある本社と物理的に距離のある地方学生などに対しての特別な措置もまだ無い。

この件に関しては、「特別な対応は取っていないが、しっかりと学生の置かれている状況を説明して頂ければ、こちらで対応することもできる。そのような学生は事前に連絡して欲しい」と答えた。

年々厳しさを増す就職活動。学生たちには書面に書かれた採用条件だけを見て合否の可能性を判断するのではなく、直接人事担当者に連絡して意欲を伝えて欲しい。(オルタナS特派員=池田真隆)