バーンロムサイとは、名取美和さん(65)が、1997年タイを訪れHIV感染者と初めて会い、1999年にチェンマイに設立した、HIV/AIDSに母子感染した孤児たちを救うための施設だ。

タイは観光立国である一方、民族問題や貧困によるAIDS感染者の問題など深刻な問題を多く抱えた国だ。現在設立13年を迎えるバーンロムサイは、差別や偏見と闘いながら、地道にHIV/AIDSへの正しい理解を得るための努力を続け、タイの地域社会に溶け込んでいる。

バーンロムサイのかわいい子どもたち


バーンロムサイは、単なる孤児院ではなく大きな家族の住む家という方針で、7歳から19歳まで30名の子どもたちが暮らしている。開設当初から3年間で、10人の子どもたちがエイズを発症し、感染症で亡くなった。しかし、2002年10月以降、抗HIV療法を取り入れることが可能になってからは、1人も発病せず昨年6人の子どもたちが巣立っていった。

名取さんは、バーンロムサイの運営を自立したものにしなくてはならない、と考えた。まずホームの敷地内に縫製場を作り、グラフィックデザインを学んだ名取さんや娘の美穂さんが、タイ人スタッフを指導している。その技術が活かされた質の高い衣類や小物などの商品を、日本にある「バーンロムサイ鎌倉店」という常設店で販売している。

「バーンロムサイ鎌倉店」の様子 着心地の良いガーゼ素材の服やチェンマイならではの個性的な小物類が充実 


そしてホームの隣接地には、支援者の方々の寄贈によるコテージ、ゲストハウス「hoshihana village」を運営している。さらに小農園プロジェクトが、進行中だ。隣接する農園で、野菜が少しずつ収穫できるようになった。これらの衣・食・住に関わる3つのプロジェクトが自立への礎となれば、将来子どもたちが戻ってきた時、働く場所になる。

「hoshihana village」の「すいかハウス」 ツインベッド、バスルームと2棟共通のオープンダイニング&リビング、キッチン


子どもたちの未来を願い、「継続させたい」と語る名取美穂さん。バーンロムサイの継続とは慈善の心と高いプロ意識にあると感じた。(オルタナS特派員 奥田景子)