――内野さんは「サスティナブル概論」の講師や、プログラム全体のディレクションもしています。土佐山に住み込み、3カ月に渡る長期間のプログラムですが、どのようなことを教えていきたいですか。

土佐山アカデミーでは、新しい暮らしや仕事のあり方を形にするための実践的な「知識」、現場での「経験」、そして先駆的な取組みをする先人や専門家たちとの「ネットワーク」を得てもらいたいと考えています。

どのプログラムも、自分の身体や感覚を使って学ぶことに重点を置いています。頭を使って学ぶだけではなく、海や山、地元の方とのフィールドワークを豊富に盛り込んで、実際に行動しながら学べるようにしています。

プログラムを通じて、自然や地域、人が本来持っている可能性を引き出し、新しい価値を生み出していく力を、実践しながら身に付けてもらうのがねらいです。

■揺るがない土台をつくり、次の暮らし方を考える

――土佐山アカデミーで教わったことは、社会でどのように生かすことができますか。

仕事上でも生活の上でも、今、何が起こっているのかを本質的に把握する力が養われると思います。

土佐山の周りには豊富な自然があります。それは、人間の力では作れないものばかりです。その「本物」の中に身を置くことは貴重な体験になります。

自然の中で生きていると、多くのものに支えられて生きていることを実感するので、原点に立ち返れます。生態系の一部である人間として、自分の土台を作り、どんな役割が果たせるのか主体的に考える場として、土佐山アカデミーを活用してもらいたいです。

――現代では、若者の離職率が高いのも、自分は何がしたいのかわからない人が多いからかもしれません。

つながりの見えにくい社会の中で、自分のやっていることが、何の役に立っているのか、何のためにやっているのかが、実感しづらくなっていることもあると思います。土佐山のようなフィールドで、実際に現場で活躍する人々から得る学びや気づきは、自分は何がしたいのか、ということをリアリティを持って考えるきっかけになるはずです。

参加者それぞれが、自分の個性や特性を最大限に発揮できるような暮らしや生業づくりの種を、土佐山アカデミーでひとつでも多く見つけてもらいたいと思っています。


内野加奈子プロフィール:
慶應義塾大学SFC卒。ハワイ大学院にて沿岸域環境を研究後、州立研究所にて環境モニタリングに取り組む。傍ら、日米の教育機関と提携し、自然をベースにした学びの場づくりに携わる。海図やコンパスを使うことなく自然を読み航海する伝統航海カヌー「ホクレア」の日本人初クルーとして、歴史的航海となったハワイ~日本航海をはじめ、数多くの航海に参加。

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