ブラジル・リオデジャネイロで今月20-22日に開かれる地球サミット「リオ+20」。
10万人近くが集まる世界最大級の環境関連会議だが、日本政府は最大の環境課題である「原発」について、政府提案には盛り込まない方針が明らかになった。市民やNGOからは批判や落胆の声が上がっている。
「ジャパンパビリオンに入る自治体は東京や横浜、北九州――。この中になぜ福島がないのか」
福島の復興支援にあたるNGO関係者が不満をぶつけた。5月31日、リオ+20に参加する各分野の関係者が意見交換する「国内準備委員会」の、本会議前最後の公開会合だ。リオの本会議場近くに出展する日本政府のパビリオンは、ほぼ中身が固まっている。
会合に出席した外務省の担当者は「東北3県の自治体が企画立案者として入るのは困難だが、東北の復興については展示やイベントで伝える」などと説明したが、原発事故の教訓や放射能汚染の現状を世界に伝えるべきだと訴えるNGO側との温度差は明らかだった。
リオ+20に対する日本の政府提案(インプット)は防災や食料安全保障、水など9項目のテーマが掲げられている。しかしエネルギーの項目に「省エネ」や「再生可能エネルギー」はあっても「原子力」「原発」の文言はない。大飯原発の再稼働が決まろうとしている中、日本政府にとってわざわざリオで原発を語ることはタブーであるようだ。
国とは別の立場である国内準備委員会でも、原発についての議論はまとまらなかった。脱原発を鮮明にしたいNGO側に対し、経団連を中心とする企業・産業グループ側はかたくなに「存続」を主張。
「原発事故は不幸にして発生したが、事故の教訓やデータを国際社会と共有し、原発の安全性強化につなげることが日本の役目」と、原発輸出を前提としたような意見に「あっけにとられた」というNGO関係者もいる。
最終的に「原子力発電の今後については、早期計画的撤退あるいは選択肢として残すという議論がある」という両論併記の文書が国連事務局に提出された。
31日の会議では「原発や放射能の問題をどれぐらい議論できたのか」という疑問の声が残る一方、「日本国内でもまとまっていないことが国連の本会議で議論されないのは仕方ない。限界を感じた」とあきらめの声も聞かれた。
それでもNGOの中には現地で脱原発をアピールする横断幕を掲げようと呼び掛けたり、サミット後も対話の機会を探ったりする動きがある。「場外」での議論はまだ続きそうだ。(オルタナ編集委員=関口威人)