今井氏がディーピーを立ち上げた背景には自身が社会から壮絶な批判を受けた過去がある。今井氏はイラク人質事件で拉致された3人のうちの一人である。2004年、当時18歳であった今井氏は劣化ウラン弾の絵本を書く為の取材としてイラクに入国。イラク戦争が行われている最中であり、イラク武装勢力に拉致されてしまった。

無事解放はされたが、帰国した今井氏に待っていたものは、相次ぐ批判と暴力であった。「危険だといわれていた地域になぜ入国した」という無数のバッシングが今井氏の自宅に届けられたという。さらには、突然通りすがりの人に殴られてしまうこともあったという。

今井氏自身が「社会に拒否された」と語るこの経験が背景にあり、ディーピーを設立したと話す。「自分の中で悩みを抱え込み、何らかの原因で通信制高校に通わざるを得なかった生徒たちが社会に出る手助けをしたい」と話す。

年下、年上関係なく、お互いから学ぶ


クレッシェンドの授業で講師を務める社会人は20人ほどいて、全てボランティアである。事前にディーピーが面接を行い、合格したものだけが講師になれる。審査の基準は、「否定しない」、「年上、年下から学ぶ」、「様々なバッググラウンドの人から学ぶ」がある。この要素を持った人が講師として、働くことができる。

今後に期待することとしては、ディーピーの授業に参加していない生徒へのアプローチがあげられる。放送大学4年の男子生徒は、「通信では、ひきこもりも多いので、そもそもこの授業に参加したいという意思を表示できない生徒もいる。一番重要なのは生徒が能動的に参加できるようになること。それができなけば卒業後の進路の割合は変わらないのではないか」と話す。

クレッシェンドへの参加率を向上させるために、現在ディーピーでは学校側との連携を生かしている。授業の終わりに先生から生徒へ、クレッシェンドへの参加を促している。(オルタナS副編集長=池田真隆)


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