グラミン銀行の創業者でノーベル平和賞受賞者のムハメド・ユヌス氏がこのほど来日し、シンポジウム「ビジネスと社会性の融合が生み出す可能性」が日本財団(東京・港)で開催された。宮城県女川町の「蒲鉾本舗高政」の4代目・高橋正樹氏ら、日本のソーシャルビジネス実践者が登壇した。
ユヌス氏はシンポジウムで、「大学で経済学を教えていても、教室の外では貧困で人が死んでいく。学問の世界にいると何でも知っている気になるが、学んだ知識を実践しなければ意味がないと思った」と、当時の心境を語った。
1972年に米国からバングラデシュに帰国すると、貧しい人たちが高利貸しから借りた小額のお金を返せずに、苦しんでいる現実を目の当たりにした。彼らに自身のお金を貸したことから、グラミン銀行は始まった。「貧困を救うための闘いだった」という。
女川町で被災した高橋氏は、「人口流出が続く女川町が20年後、どんな町になるか分からない危機感がある。でも、笑顔あふれる町にしていきたい。多くのものを失った女川町で事業をすること自体がソーシャルビジネスだ」と語った。
会場では、登壇者と参加者との対話も活発に行われた。参加者から「人生の目的をどうやって定めたら良いのか」という質問が出ると、ユヌス氏は、「全ての人間はユニークだ。裕福な人も貧しい人も同じ能力がある。自分の人生を一番熟知しているのは自分なのだから、どういう方向に進みたいか、自分で人生をつくることが大切だ」とした。
シンポジウムには、高橋氏のほか、富士ゼロックス元会長の小林陽太郎氏、エシカルジュエリーブランド「ハスナ」の白木夏子社長、国産Tシャツメーカーである久米繊維工業の久米信行社長、「世界を変えるデザイン展」を手掛けたグランマの本村拓人社長が登壇した。(オルタナ編集部=吉田広子)