内容紹介
日本人にとっては当たり前のトイレ。自宅にはもちろん、駅にも、学校にも、どんな職場にだってある。都心なら数分も歩けばコンビニで“うんこ”ができる。そんな当たり前の「トイレ」の国際事情をイギリスの女性ジャーナリストが描き出したのが本作品。
トイレの重要性が語られる時、たいていは途上国が舞台です。
よくある語り口としては、「きちんとした糞尿処理をしなければ、小バエが発生し、感染症を引き起こす」とか「大腸菌のついた手で食事をするから下痢をして脱水症状になる。だからトイレが重要なのだ」とか。
もちろん大切な話です。でも、トイレの大切さには本当はもっと多くの理由があるのかもしれないと思ったことはありますか。そもそも、トイレが無くてももちろん生活はできます。川へ行けば水に流れるし、森へ行けば土に帰る。だけど、それでもどうしてトイレが必要なのでしょうか。トイレを整備すれば子どもの学力が向上するって考えたことは?
一方で、トイレ事情が問題となっているのは途上国だけではありません。先進国であるイギリスやアメリカのトイレや下水道で何が起きているのか。その答えはマンホールの中にあるようです。
下水道は命がけの戦場です。糞尿の匂いなんてたいしたことはありません。トイレには色んなモノが流されて、様々な物質がお互いに化学反応を起こしメタンガスや硫化水素が発生します。豪雨が降れば皆一緒に流されます。時には、昨日誰かがトイレに流した手榴弾が落ちているかもしれない。トイレが当たり前に使えるためには多くの人の労力が必要だときっと分かるはずです。
うんこなんて汚い話だと思ったかもしれません。だけど、『セックスについて率直に語ることなくして、エイズの問題を話し合うことはできないように、衛生の問題も、クソについて率直に語ることなしに、話し合いを進めることはできない』んだそうです。
穴を掘っただけのトイレから、穴を自動洗浄してくれるウォシュレットまで、トイレの重要性とそれによる世界の問題解決の糸口を本書は提供してくれるに違いない一冊です。
おすすめしたい対象
途上国の開発に関心のある人や公衆衛生に関心のある人。あと、トイレ業界で働きたい人。ちなみに、僕はバングラデシュに行く直前にこの本を読み、もう最高に楽しい勉強が向こうでできました。途上国へ行ってボットン便所の貯蓄容積を計算したくらいにこの本に感化されました。
トイレの話をしよう―世界65億人が抱える大問題
2009年9月30日
著者:ローズ・ジョージ
大沢章子・訳
1800円(税抜)
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