世界銀行は、アフリカで産出される石油やガスはアフリカの貧困削減につながらない、とする報告書を発表した。特にアンゴラやコンゴ共和国、ガボンでは鉱物資源が豊富にあるにもかかわらず、貧困層はかえって増えている。ガボンでは幼児の予防接種率は低下しているという。
アフリカではこのところ相次いで資源が発見されている。アフリカでナイジェリアに次ぐ産油国のアンゴラは、現在の石油生産量を維持しても向こう21年は石油を採掘できる見込みだ。エネルギー資源以外をみても、ギニアは世界のボーキサイト生産量の8%、ザンビアとコンゴ共和国は合わせて世界の銅生産量の6.7%、ガーナとマリは世界の金産出量の5.8%を占める。こうした資源に支えられる形で、世界不況の向かい風の中、2012年のアフリカ経済成長率は4.8%に達する見通し。
アフリカ経済はこの10年で大きな成長を遂げた。世銀の報告書によれば、48カ国中かなり多くのアフリカ諸国が「中進国」に移行しつつある。ただ、この成長の背後には“中国の陰”が見え隠れする。サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカの中国向け輸出の伸び率は2010年、19.3%にも上昇した。
アフリカ経済は中国への依存度を強めており、一時の勢いを失くしつつある中国経済のマイナス影響を受けるリスクが懸念されている。また政情不安の南スーダンとチャドは経済成長の波に乗れていない。
世銀のアフリカ担当者は「アフリカ諸国は鉱物資源から得る収入を、雇用や栄養改善、貧困削減、教育などに使うべき。アフリカの経済成長は最も貧しい層に届いていない」と話す。資源から得られる収入がエリートの懐に入るだけでなく、国民全体に行きわたる社会を作らない限り、鉱物資源主導の経済成長は貧困を解消しないといえそうだ。(寄稿・開発メディアganas記者=今井ゆき)
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