ニカラグアでは総人口約514万人のうち、129万人が感染のリスクにあり、少なくとも5万人の感染者が存在すると推定されている。媒介虫のサシガメは日干しレンガの壁や藁葺きでできた家屋を好んで生息しており、リスク人口の多くがそのような家屋に居住する貧困層となっている。そうしたことから、シャーガス病は「貧困の病」とも呼ばれている。

2009年より、JICAはニカラグア保健省と協働しながらプロジェクトを実施してきた。調査能力(血清検査・昆虫学的調査)、殺虫剤散布の運営管理能力、監視システムの運営管理能力、住民のシャーガス病予防能力の、4つのプロセスをそれぞれ強化していくことで、シャーガス病の媒介虫感染の中断を目指している。サシガメの生息状況を把握するための調査を行い、生息家屋率が5%以上の集落に殺虫剤を散布する。散布して終わりではなく、その後のサシガメの動向を監視することも不可欠だ。

「シャーガス病自体を完全に撲滅することできないんです。できないという前提で、シャーガス病をコントロールすることを目的にプロジェクトに取り組んでいます。昔と違い、いまは保健省がこの病気に関して、どの地域にどんなリスクがあり、それに対して何をしなければいけないのかということをきちんと認識できるようになってきた。さらに、このプロジェクトの鍵となるのが住民の参加。サシガメの監視活動は、保健省と住民とが一緒になってやっていくのです」と中村さんは語る。

◆住民参加でサシガメを監視◆

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