現在は、シャーガス病対策のプロセスにおける基準書と業務マニュアルを作成し、保健省の承認を受ける運びとなっている。今後は中央省庁レベルで整えられた政策を、きちんと現場レベルまで落とし込んでいかなければならない。プロジェクトを進める上で必要なことは、保健省側の負担をなるべく減らし、やるべきことをシンプルにすることだという。煩雑になればなるほど、できる人が限られ、仕事が負担になってしまう。保健省が扱う問題はシャーガス病だけではないため、他の活動に影響されない仕組みを作っていくことは、継続性の観点からも重要なことだ。

「物事を継続させるにはモチベーションの管理が不可欠です。高い意識を持つことも大切ですが、このプロジェクトでは保健省と住民の行動がお互いのモチベーションになるような仕組みを構築している。サシガメの数が減ってくると、どちらの立場においてもシャーガス病の優先順位は低くなってしまう。プロジェクトとしては喜ぶべき傾向なのですが、放っておくとサシガメが再生息する可能性もあります。それを未然に防ぐため、年に一度の『シャーガス病の日』を設けて、サシガメ捕獲・啓発キャンペーンを行なっています。継続させるための、一つの仕組みです。プロジェクト期間は残り1年半ですが、これまで実施してきたことをより高いレベルで定着させていきたい」と中村さんは意気込む。

「サシガメの駆除」と初めてこのプロジェクトの話を聞いたとき、あまりの途方のなさにどのようなことをしているのか想像すらつかなかったが、私が現場で目にしたものは地道な作業とそれを継続する根気強さだった。そうした積み重ねが、大きなことを成し遂げる唯一の道なのではないだろうか。(オルタナS特派員=清谷啓仁)


・シャーガス病がよくわかる動画(提供:有村拓朗氏、吉川恭平氏)
http://www.youtube.com/embed/fm3oNCODygk

・サシガメ対策啓発ソング(スペイン語)
http://www.youtube.com/watch?v=-QtMyMojuLI

・JICAオフィシャルサポーター高橋尚子さんが中米を視察
http://www.jica.go.jp/supporter/takahashi/201301.html

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