中米自由貿易協定を批准したことにより、コスタリカには周辺国から低価格の農産物が大量に入って来ることとなった。その影響を最も強く受けているのは小中規模の家族農家であり、コスタリカ農牧省はJICAに対して家族農家への支援を要請した。
現在のコスタリカは工業化へと大きく舵を取っており、国全体で見ると自由貿易協定による恩恵は大きかったと言える。かつてコスタリカの代名詞でもあった、コーヒー・バナナ・パイナップルなどの輸出割合は年々減少し、代わりに台頭してきたのが半導体や集積回路などの工業製品だ。
さらに、工業化を支えているのは教育への投資。同国は軍隊を持たない国として知られているが、その分の予算は教育分野へと回り、この国の発展の大きな原動力となっている。職業訓練校も充実させており、ここで技術を身につけた人たちが、中間技術者として第二次産業に従事している。
こうした第二次産業への後押しの一方で、国民の多くを占める小中規模の農家はこれまで支援を受けれずにいた。国内農業を守っていくことに、政府や農家が危機感を抱いていたことは想像に難くない。
「貿易自由化の影響を受けている農家は多く、何もしなければ状況は悪くなる一方です。ただ、忘れてはいけないのは、私たちJICA側はあくまでアドバイザーであるということ。私たちが何かを提示するのではなく、農家さんが自分で考え、問題点を探り、解決方法を見つけ出し、実行する。そうして家族農家を支援し、自立を促すことが私たちの使命なんです」と平井さん。
■消費者に選んでもらう理由