家族農家への支援として、農牧省は「一村一品運動」と「農家による直販売」を推し進めている。加工品も含めて地域ならではの特別な産品を生み出し、それを農家と消費者が顔を付き合わせて売買できるような仕組みをつくっていく。そうすることで市場の活性化を図り、農家の収入へと繋げようということだ。

さらには、周辺国から入ってくる低価格の農産物に対向するために、「低価格ではないが、安心して食べられる地元の農産物を提供すること」を一つの活動指針としている。こうした活動を進めていく上で重要なことは、まず第一に、農家による生産を画一された方法で行うことによって、農産物に関する安全基準を絶対的に引き上げること。

そして第二に、生産したものを消費者に選択してもらうということ。多くの消費者は依然として価格を重視する傾向にあり、自分たちがつくったものを「選んでもらう理由」を生産者側が強く訴えていかなければならない。

「農産物の品質向上は、こうした活動をしていく上では必須条件です。そうした前提がなければ、いくら直販売の市場を開拓したとしても消費者は反応してくれません。そして味や品質ももちろんですが、用途という面でも提示していく必要があります。例えばサツマイモは中米が原産地なのですが、地元の料理にはまったく活用されていません。原因を探ると、消費者がそもそもサツマイモの調理・活用法を知らず、結果として購入の選択肢に入らないという場合がほとんどです。品質アピールと合わせて調理法やレシピを提示することも、コスタリカでは必要なことなんです」(平井さん)

コスタリカの食生活は保守的で、毎日同じようなものばかりを食べているという。地道な啓発活動が、最終的には農産物の購買へとつながる。

TPPと日本農業の行く末は

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