――調査されていない地域では、汚染度が不明確です。安全なのか、危険なのか判断できません。このような状態だからこそ「不安を煽るような発言をするな」という指摘もあります。
山本:私は演説などで、「事故前は『放射性廃棄物』扱いだった1キログラムあたり100ベクレルの食べ物を安全と言う国は理解できない」と言いました。この発言に対しては、様々な指摘を受けたことも認識しています。原発処理に際して出る廃棄物の基準と、食品の安全基準をつなげて考えてはいけないという意見も分かります。
しかし、そもそも、1キログラムあたり100ベクレルという国の基準値さえも、医学的に安全だとはっきり言える人は誰もいません。
だとしたら、予防原則に立たなくてはいけないのです。医学的にも、科学的にも安全か判断できないなら、予防原則に立つのは当然のことです。
予防原則にさえも立たない理由は、目の前の経済を止めたくないからです。目の前の経済を回すために、人々にリスクを背負わせているのです。これを続けていけば、事故後に言った「ただちに影響はない」の答え合わせをする時期がくるでしょう。
そのときに、安全だったらいいが、もしアウトだったら、どうするのでしょうか。その責任は誰が取るのか。国は取ってくれるのでしょうか。
「脱被曝」の実現には、まずは調査することが必要です。そして、少なくとも、事故前の基準に限りなく近いものを求めていかないといけないのです。でも、そんなことをしたら出荷できない農作物が増えると言われるかもしれません。「福島の人に失礼だろ」と言われるかもしれません。しかし、そんなことを言うほうが失礼だと思います。
福島県だけが汚染されているわけではないのです。東日本一体に汚染は広がっています。セシウム、ヨウ素以外の各種を調べなくては、安全は手に入れられないのです。
■「ただちに影響はない」の真意