大手証券会社が人気若手タレントを少額投資非課税制度NISA(ニーサ)のテレビCMなどに起用し、若者の投資への新規参入を促しています。NISAとはイギリスで国民の約4割が資産形成の手段に利用するISA(個人貯蓄口座)をモデルにした制度で、NIHON Individual Saving Account(日本インディビジュアルセイビングアカウント)の略称。2014年1月にスタートします。新しく購入した証券や投資信託の上限100万円分から得られた所得を対象に、本来20%かかる税金が免除されます。投資をするには追い風の状況ですが「資産形成の目的やNISAのメリット、デメリットを正しく理解してほしい」と語るのは、ファイナンシャルプランニング業務を行う「財コンサルティング(本社:大阪市北区)」のファイナンシャルアドバイザー、平山哲也さん(54)。2回にわたって平山さんが考えるお金の常識について伺います。1回目は資産形成の考え方です。(聞き手・オルタナS関西支局特派員=小林欣広)

「資産形成はライフプランという目的ありき」と語る平山哲也さん

――資産形成とはなんですか。

平山:資産形成とは長期的なライフプラン、つまり人生の目的を達成するための手段です。例えば、50歳までに家を建てること、子ども2人を大学に行かせることなど、期間も目標とする金額も人それぞれ異なります。

極端なことを言えば、投資をせずに貯蓄だけで目的を達成するのも資産形成です。しかし通常は、利率の低い貯蓄だけでは、なかなか目的を達成できないので、あえてリスクのある投資で資産形成を行います。

――投資には危険というイメージがありますが。

平山:投資は長期的に資産を形成する手段であり、未来を予測して短期的にお金を動かすことで差益を得る「投機」と呼ばれるマネーゲームとは性質が違います。資本主義経済は成長することが前提なので、長期的には物価が上昇しお金の価値が下がります。

その一方で、投資による資産形成は物価の上昇にも対応できます。しかし、日本人は銀行に貯蓄すれば安全にお金を増やせると考えた時代が長く、危険なイメージの投資には消極的です。

私もお客様の相談を受けていて、20代の若者が親に投資を止められているという話をよく聞きます。確かに投資には一定のリスクはありますが、経済の仕組みや投資の方法、リスクの考え方を理解することが大切です。

――資産形成をするために必要なことは。

平山:自分の資産を自分で守るためにどうすれば良いか考えることです。日本人は国が何とかしてくれる、という考えがいまだに強いと感じています。

つまり、「銀行はどんなに不況になっても国が助けてくれるから安心」という依存心が、これまで日本人が貯蓄を善しとしてリスクのある投資をしてこなかった原因だと考えています。金融先進国といわれる英米では日本に比べてあっけなく銀行が倒産するので、資産は自分で守るという意識が強い。

また、投資が活発なだけでなくファイナンシャルプランナーを通じて正しい知識を得て、資産形成をする人も日本に比べて多いです。NISAという制度も、自分で自分の資産は守りなさいという国からのメッセージではないでしょうか。

――リスクを取ることは勇気がいると思いますが。

平山:金融業界でいうリスクとは期待値に対する収益のブレです。貯蓄のように将来もらえる金額が決まっている資産は、運用のリスクを相手が引き受けてくれます。

反対に投資は自分が運用のリスクを取るので、収益も損失も自分のものになる。リスクとは必ず損をすることだけを意味しているのではなく、一方で収益の成果も期待できる、可能性を含んだ言葉です。

例えば、私たちが飛行機に乗ってハワイ旅行に行くとき、万が一墜落事故に遭遇するリスクがありますが、現地に着けば楽しい時間を過ごすこともできます。資産形成も同じで、きちんと具体的な目標を持ち、リスクをとって投資運用して購入が実現すれば夢が達成してより良い人生を過ごせる。

従来のお金の常識の縛られず、目的達成のために自分の資産は自分で守るという意識を持ってほしい。NISAも国や大手証券会社が勧めているから良いものだと思考停止せず、運用したいのなら自分で十分にメリットデメリットを理解してからにしましょう。

*第一回は資産形成についてお話を伺いました。第2回は少額投資が非課税になるなど話題になっているNISAの実態についてお話を伺います。