コンプレックスを楽しむためのノウハウが詰まったブログメディアが昨年末、オープンした。「ぽっちゃり」「話が苦手」「背が低い」など6つのコンプレックスに特化した記事を1日に2本ずつ掲載している。人は誰しも話したくないことや、苦手とすることを持っているはず、その悩みをポジティブにとらえられたら、人生はどう変わるのか。(オルタナS副編集長=池田真隆)

運営するインターン生たち。写真左上が岡浦加奈さん、左下が池田慎一さん、右上が樋渡友里恵さん、右下が根木啓輔さん

同メディアの名称は、「enJOY Complex(エンジョイコンプレックス)」。運営しているのは、マーケティング・PR会社アウル(東京・港)のインターン生たちだ。今年4月に同社に入社予定の現役大学生たちがコンセプトからコンテンツまですべて自分たちで考案した。

この企画が始まったのは、昨年6月。同社の北村俊二代表からインターン生たちに、「予算100万円で、メディアをつくれ」という仕事が与えられた。これまで、内定者としてわずか数回しか会ったことがなかったので、お互いがどういった人物なのか把握仕切れていないなかで、企画は動き出した。

ローンチを12月と決め、さっそくどのようなメディアにするのか話し合った。実際に会うのは、週に1回だけ夜6時から9時までの3時間で、それ以外はスカイプやフェイスブックなどを使って話し合った。

案は続々と出て、最終候補に残ったのは、興味があるけどやったことがない趣味を疑似体験するような記事を集めたサイト、ユーザーから旅行した国の情報を集め、行かなくても気になる国を知れるサイトなど。

そのなかでも、メディアとしてターゲット層が多くいるだろう「コンプレックス」に焦点を当てた。インターン生の池田慎一さん(東京大学理学部4年)は、「人と話すことを苦手としたり、背が低いことでおしゃれを楽しめないなど、自分を含めて周りにコンプレックスを抱えた人は多い。その悩みを笑顔にできればと考えた」と話す。

1日に2本掲載している記事は、クラウドソーシングを使ってライターから集めている。書き手とのコミュニケーション手段はメールなので、こちらの思いを丁寧に、かつ正確に伝えることに苦戦したと、岡浦加奈さん(早稲田大学国際教養学部4年)は言う。

毎月特集企画も組み、1月は「お正月にまつわる悩み対策」だ。例えば、お餅を食べながら、1日中テレビの特番を見て過ごし、身体がなまってしまった人のために、リフレッシュするウォーキングや背が低くても和服で存在感をアピールする着付け方法が紹介されている。

インターン生たちのアドバイザーとしてかかわってきた同社新卒1年目の池谷亮人さん(25)は、「予想以上のモノをつくりあげたことに驚いているが、なにより一つのモノを最後までつくり上げたということが素晴らしい」と後輩の活躍を誉める。

インターン生たちに聞くと、ローンチまでの6カ月間にさまざまな葛藤があったという。根木啓輔さん(青山学院大学総合文化政策学部4年)は、仕事ができない自分に腹が立ち、12月のミーティングで仲間に心境を打ち明けた。

「まったく役に立てていなくて、自分がいることが迷惑ではないのか」と話した。すると、「私も役に立てていないと感じている」など次々と胸の内を明かしだした。根木さんは、抱えていた悩みは自分一人だけでなく、みんなも感じていたのだと知り、心が通じ合えた瞬間だったと振り返る。

今後の目標は年内に、500万PVだ。ハスキーな声をコンプレックスに感じている樋渡友里恵さん(慶應義塾大学総合政策学部4年)は、「新しい感動を呼び、新しい行動に導きたい。私自身も声が低いことが悩みだったが、この声が好きな人もいることが分かったら安心した。そのように、マイナスをプラスに変える記事を出していきたい」と話す。

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