自然派化粧品ブランド「ザ・ボディショップ」を展開するイオンフォレストの福本剛史社長らは28日午前、田村憲久厚生労働相におよそ20分間面会し、化粧品の動物実験反対を要請する署名を提出した。署名は2012年から2013年にかけて、同店舗やオンラインなどで集め、その数は約12万人分に及ぶ。田村厚生労働相は、「ここまでの数の署名が集まっていることに驚いている。だが、医薬品や食品に比べて、化粧品の分野で法律をすぐに改正することは難しい」と話した。(オルタナS副編集長=池田真隆)

署名を提出する福本代表(写真右から2番目)と受け取る田村厚生労働相(写真右端)=28日午前 厚生労働大臣室で

12万人分の署名を受け取った田村厚生労働相は、「化粧品は医薬品や食品と異なり、命にかかわるものではないため、すぐに法律で規制することは現実的に厳しい。しかし、美しさに動物の犠牲があることは、決して良いことではない。代替法を取り入れることを促進できるように予算をつけていこうと考えている」と話した。

消費者のムーブメントにも期待した。「動物実験を自主規制しているメーカーが、より多くの消費者を巻き込んで、動物実験で作られた化粧品の不買運動や反対を求めるキャンペーンを起こすことができれば、市民の声としてより受け止めやすくなる」。

田村厚生労働相と面会した福本社長は、「法律の部分ではすぐに改正することが難しいと話されたが、消費者のムーブメント次第で状況は変えていけると感じた」と話した。

今後は、動物実験の実態を知らない人に向けて、より一層周知していきたいと意気込む。「動物実験で作られた化粧品は女性用のものだけではない。男性も日々使うシャンプーもそうである。今日の面会をきっかけとして、まずは知ってもらうために最善の努力をしていきたい」(福本社長)。

今回、署名を提出したザ・ボディショップは、1976年の創業から動物実験を行わずに自然派化粧品にこだわりつづけている。独自のフェアトレード手法を取り入れ、取り扱う商品の9割に適用している。

EUでも、1993年から動物実験に反対するキャンペーンを開始し、欧州委員会に400万人分の署名を提出するなど、美しさに犠牲はいらないと指揮を取り、環境経営のパイオニアとして世界的に知られている。

■約8割の国で化粧品の動物実験が継続中

日本には全ての化粧品に動物実験が義務づけられているわけではない。化粧品の安全性保証は、企業が自己責任で行うので承認申請の仕組みはないのだ。しかし、新しく開発したタール色素、紫外線防止剤、防腐剤を配合するときや、配合量を規制されている成分の量よりも増やしたいときには、安全性の面から動物実験を行わなければいけない決まりとなっている。

主な動物実験としては、「眼刺激性試験」、「皮膚感作性試験」、「単回投与毒性試験」などがある。眼刺激性試験では、マウスとしてウサギを利用し、片方の眼に試験物質を点眼し、その刺激を観察する。眼を手足でこすらないように保定器で拘束された状態で96時間の経過をみるという。ウサギが激痛を感じている場合は、直ちに殺処分される。

単回投与毒性試験は化学物質の毒性をはかるために行われる。あらかじめ断食させておいた動物の口へ強制的に試験物質を投与する。中毒症状を2週間ほど観察し、実験後は生死に関わらず、全て解剖される。

美しさに犠牲を強いる動物実験のあり方が問題視され、日本では、資生堂とマンダムが動物実験廃止(中国向けの製品を除く)に踏み切った。しかし、花王やカネボウなどは続かない。動物実験の代替法である科学的手法を取ると、コストがかかるためや、化粧品業界内でのしがらみもあるという。

昨年3月、EU全域で化粧品の全面禁止が決まったが、いまだに約8割の国で動物実験は行われている。