カナダ在住の環境活動家セヴァン・スズキさんは2月12日、東京京橋で来日記者会見を行った。今回の来日は、国内主要環境NGO団体と組み、全国でトークライブを行うため。92年にリオ・デ・ジャネイロの「地球環境サミット」で披露した伝説のスピーチをはじめさまざまな環境活動を行う世界的識者の一人だが、社会を巻き込んだ動きを起こすために、胸に刻んだ失敗経験や教訓にしていることはあるのか、話を聞いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
「これまで行ってきた環境活動において、教訓にしている失敗はあるか」――筆者の質問にセヴァンさんは、「個人的にはたくさん失敗している。たとえば、ソーシャルメディアが頻繁に更新できなかったり」と笑って答えた。
しかし、そのことを言い終わると真剣な顔つきになり、「20年前からずっと、私たちの活動は成功したのか、失敗したのか考えている」と切り出した。20年前とは、1992年、各国の首相や外相たちの前で威風堂々と披露したスピーチにさかのぼる。
そのスピーチから20年が経過し、世界はどう変わったのだろうか。推定150万人以上の犠牲者を出したルワンダ紛争や「イラクの自由作戦」と題したイラク戦争などで、何の罪もない命が大量に亡くなった。
地球温暖化も進行し、異常気象が続出した。地震を除いた自然災害規模ランキングの上位10件は、すべて1990年以降に起こったものだ。さらに、日本国内では、脱原発運動が市民の間で起きているが、政府は再稼動を進める方針だ。
この結果を見て、さまざまな評論家から、なぜ(セヴァンさんの環境活動が)成功しなかったのか分析されたという。そのような声を受けて、セヴァンさんが感じている教訓は、「ビジョンの明確化」と話した。
「私たちが望む未来のビジョンを、もっともっとクリアにしなければいけない。世の中の多くの人に関心を持ってもらうためには、そのビジョンの中に幸せがあると具体的に感じられることが必要」(セヴァンさん)。
■都市から地方移住は最もラディカル
日本では東日本大震災を機に、経済成長の拠点となる都市部から高齢化が進む地方へ移住する若者たちが増えている。このことについては、「当然の動き」と見ている。
「しっかりとした教育を受けた大人たちがつくる社会が持続可能になっていない。そのことに気付いた若者たちが自分たちで環境をつくる側に周ったのは、当然のこと」。
しかし、まだ人数は少数であり、オルタナティブな動きだ。そんな若者たちに伝えたいメッセージとして、「あなたは大きな流れの中にいる。一人ではない。今の時代に、田舎のコミュニティーでつながりを取り戻し、食の生産現場に近い場所で暮らすことは、最もラディカルなことだ」と話した。
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