海面が見えるほど透き通った海がある沖縄に行くのは、バカンスではなく、免許を取りに行くため。講習終わりには、自然の魅力を満喫するもよいし、沖縄料理に舌鼓を打つのもありだ。ストレス社会から解放される南の島での免許合宿だが、実はここに、日本の「高齢者活用」や「若者との共生」のヒントがありそうだ。若者と高齢者のハブとなっている自動車学校を訪ねた。(オルタナS副編集長=池田真隆)
沖縄は宮古島にある三和自動車学校の下地寛克社長(50)は、南の島で免許合宿を行った若い生徒から、「地元の人たちと仲良くなれてうれしかった」とよく聞くという。
「宮古島では人とのふれあいを大切にしているので、街で出会ったら必ず挨拶するよ。それに、仲良くなればそのまま一緒にご飯食べたりもする」(下地社長)。
飲み会終わりの〆として、ラーメンではなくステーキを食べることが若者たちの間でブームとなっている。ステーキを食べるようになったのは、「近所に深夜まで営業しているラーメン屋が少ないから」と言う。
下地社長は、宮古島の教習所で働いて20年を超すベテランだ。免許を取得したいと考えている学生たちに、「ここに来て、都会では味わえない空気を感じて、楽しんでほしい」と伝える。そして、「せっかく来たからには、仲良くなって帰ってほしい」と、笑顔で話した。
ここには、全国からさまざまな若者が訪れる。グループで来ることもあれば、バックパッカー中の旅人も来る。
海が自慢のこの地だが、下地社長のお勧めは夕陽の光だ。宮古島市の北西部にある池間大橋から見える景色は絶景だと言う。その橋の下には、エメラルドグリーンの海があり、沈む夕陽とマッチして幻想的なシーンを生みだす。全長2キロほどあるので、ドライブに最適である。
■元気の秘けつは、「居場所」
そして、こうした場は若者と高齢者がコミュニケーションを取る「絶好の場」にもなる。実は、三和自動車学校の従業員の平均年齢は47歳。それだけ見ても、地域社会の高齢化の現象が見て取れる。
日本の少子高齢化は世界に先行している。2000年には、子どもとみなされる15歳未満が15%、生産年齢人口にあたる15~64歳が68%、老年とされる65歳以上が17%だった。しかし、このままの出生率が続けば、2050年には、15歳未満人口11%、生産年齢人口54%、老年人口36%となり、3人に1人は高齢者となる。
しかし下地社長は「宮古島の高齢者はまだまだ元気な人が多い」と感じている。その秘けつは、「家の中に閉じこもっていないで、外に出るからストレスが少ないからではないか」と分析する。宮古島の高齢者の多くが畑仕事に精を出し、ゲートボール場もいたるところにあるので、地元の人のたまり場となっている。
積極的に若者とも交流している。三線を旅行者や孫たちに教える人もいれば、「お通り」という伝統的なお酒の飲み方を大切にする人もいる。お通りとは、順番に一杯ずつお酒を飲んでいくことだ。
「強制的には飲ませないで、飲める人だけ飲んでいく。良いノミニケーションになる」(下地社長)。こうした「居場所」は、高齢者の間だけではなくて、地元の若者や、自動車学校の生徒ら旅行者にも開放されている。これは高齢者にとっても、若者にとっても元気の活力になっている。
「きれいな海とのんびりとした時間が流れるからストレスもない。歳をとって仕事をリタイアしても、趣味で畑を耕したりして、生きがいを見つけている。それに地元の若者や観光に来た人たちとお酒を飲んだりして楽しんでいるよ」(下地社長)
東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授は、高齢者の生きがいを「残っている力を最大限に生かして、ワクワクできることをすること」と話す。
こうした「宮古島モデル」は、高齢者と若者、地元の人と観光客を結びつけて、「生きがい」を見出し、コミュニティを活性化している貴重な例と言えるだろう。
もちろんそのまま都会に当てはめることはできないが、高齢者の活用問題さらには、生きがいを模索しているすべての人に、解決の糸口を提示するヒントが隠されている可能性はある。自動車免許と沖縄でのバケーション、両方を得ることができる「沖縄免許合宿」を通して、世代を超えたコミュニケーションを体験してみてはいかがだろうか。詳しくは、沖縄の四季折々の魅力とそこで暮らす人々の元気の秘訣を紹介するサイト「OKINAHOURS(オキナワーズ)」へ。
・「OKINAHOURS(オキナワーズ)」http://okinahours.com/