全国で150万人いると言われるロービジョン(重度弱視)者(日本眼科医会調べ)。ロービジョンの子の多くは、矯正した視力でも手元の文字が見にくいので、勉強では書く文字がはみ出したり曲がってしまわないよう、罫線が太く濃く、マス目が幅広い専用のノートを使う。日本では表紙がシンプルな大学ノート風のものしか発売されておらず、他の子のように好きな表紙を選ぶことはできない。(遠藤一)

そこで、東京でウェブアクセシビリティのコンサルティングを行う伊敷政英さんは、子どもたちにとって魅力的なデザインの表紙のノート「KIMINOTE(きみのて)」を開発することにした。

日本ではロービジョン用のノートは1,2種類しかない。選べるワクワク、表現する楽しさを増やしたい

ある時、伊敷さんはロービジョンの小学1年生女児を持つお母さんから「ロービジョン用のかわいいノートはないか」と聞かれた。女の子は「かわいくない、持っていきたくない」と言いながらロービジョン用のノートを我慢して使っているという。

伊敷さんは言う。「みんなと違うノートを持っていくだけでも、彼女にとってはイヤなことでしょう。 同じロービジョンとして気持ちはよくわかる。そしてそれがかわいくないとしたら」。

伊敷さんは生まれつきのロービジョンで、右目はコンタクトレンズで矯正して0.02、左目は光がわかる程度。「ロービジョンで育つと、自分の好みもよくわからなくなる。外で遊ぶ時も誰かの付き添いが必要だったり、様々なものが制限され、先生や親から与えられることが前提。自分で考えることをしないようになる」。

大型文具店では迷うくらいノートがあり、選ぶのも楽しい。でもロービジョンの子が使えるノートは1、2種類。「ノートの選択肢を増やしたい。そして将来、自らの手で世界を広げ、選択肢を増やしていけるようになってほしい」。

現在スタートアップとしてクラウドファウンディングサイト「READYFOR?」で、全国の盲学校や弱視学級に送るノートを制作する資金を募っている。「表紙絵はコンペで、ロービジョンの子たちが審査する。学校へ送った後はフィードバックも頂きたい。ゆくゆくは賛同してくれる印刷所と組み大量生産できるようにしたり、事業化していければ」。

「KIMINOTE」プロジェクト:https://readyfor.jp/projects/kiminote

伊敷さんの運営するウェブアクセシビリティ情報発信サイト「cocktailz」:http://cocktailz.jp/