グローバル人材の育成を目指す龍谷大学国際学部(2015年度開設予定)が、シリーズで開催している多文化共生トークセッション。9月28日、その2回目が龍谷大学深草キャンパスで行われた。今回のゲストは、平和構築コンサルタントであり元国連職員の渡部真由美氏。国際紛争の解決や人道支援に携わってきた経験をもとに、「私たちだからこそできる、世界の課題解決へのグローバルリーダーシップ」をテーマに、グローバルスタディーズ学科就任予定の清水耕介教授と意見を交わした。(オルタナS関西支局特派員=近藤 浩己)

「日本では僕はややこしいダメなやつ」と会場の笑いをさそった清水教授(左)

「日本では僕はややこしいダメなやつ」と会場の笑いをさそった清水教授(左)

■命の尊さに気づかせてくれた仕事
 
渡部氏はまず、1999年からの3年間、NGO職員として従事したコソボでの緊急人道支援活動について語った。

マイナス40度まで気温が下がるというコソボの冬。渡部氏の任務は、80万人を超す難民が厳しい冬を越すための家屋修復だったという。当時25歳の渡部氏は、凍死者を出すわけにはいかないというプレッシャーや、どれだけ厚着をしても眠れない寒さなどで、心が折れそうになったと話す。

しかし、集団虐殺された人が埋められている簡易墓地の土を掘り起こし、ベルト程度の小さな遺品をやっと見つけて涙する遺族の姿を目の当たりにし、限りある命の尊さに改めて気づいたと言う。

渡部氏と20年来の知人である清水教授も、当時のコソボを体験。「見渡すかぎり墓…という場所に立つと、『なんで僕は生きているのだろう』と、自分の生きている意味を考えた」と振り返った。

そうした凄惨な現場を経験しながらも、渡部氏は、人道支援に関われたことに感謝。「人間の弱さも強さも優しさもコソボで教えてもらいました。地球の裏側からやってきたアジア人の私に対して、今でも家族同然に接してくれる人もいる。この仕事に出会えて良かった」と語った。

■グローバルリーダーの共通点

世界の課題を解決するため、国際社会を飛び回るグローバルリーダーたち。その例として渡部氏は、緒方貞子氏をはじめとする国連などで活躍した3人(※)を挙げた。

3人の共通点について同氏は「人に対して敬意を忘れない姿勢と、この人と共に働きたいと思わせる人間力」と分析。特別な能力ではなく、人間としての魅力が大切だと語った。

一方、清水教授は、「自分の考えを相手に伝える力は、海外で活躍するために欠かせない能力。人とコミュニケーションできるという『当たり前のこと』が重要だ」と指摘。普段あいさつもできない人が、英語ができたからといって外国の人と話せるはずもないと、語学偏重の国際化をチクリと皮肉った。

「5年後、10年後は何をしていたいかな」と常に想像しながら生きてほしいと渡部氏

「5年後、10年後は何をしていたいかな」と常に想像しながら生きてほしいと渡部氏

■評価される「出すぎた杭」

グローバルリーダーを目指す若い世代に必要なこととは何か。これについて渡部氏は、ガザで遭遇した自爆テロの体験をもとに言及。100m先で自爆テロに遭い、間一髪という命の危機を感じた胸中を語り、「限りある命の中で、今しかできないことを考えてほしい。そして若さは武器。体力も精神力もある若いときにしかできないことを意識しながら過ごしてほしい」と呼びかけた。

清水教授は、「人にややこしいと言われても、疑問をぶつけられる人になってほしい」と違う角度からアドバイス。「世の中の通説に引っかかりを感じられる人には可能性がある。日本では生きづらいそういう人こそ、海外にチャンスがあります」と訴えた。

最後に渡部氏が「日本社会は出る杭を打つけれど、出すぎた杭は評価されます」と締めくくると、清水教授も共感。「他の人が理解できないくらいの杭の出かたをしてほしい。自分が正しいと思うことを世界的に追い求めてほしい」と力を込めた。

*<補足情報>
渡部氏が挙げたグローバルリーダーたち

・緒方貞子氏
元国際連合難民高等弁務官
国際協力機構(JICA)特別顧問
「紛争と難民——緒方貞子の回想」など著書多数

・セルジオ・ヴィエラ・デ・メロ氏
イラク国連事務総長特別代表
2003年8月、イラク・バグダット国連本部ビル爆破テロで死去

・ジャン・セリム・カナン
元国連職員
2003年8月、イラク・バグダット国連本部ビル爆破テロで死去

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