憲法9条がノーベル平和賞候補に選ばれている。この動きは一人の主婦が署名サイトでキャンペーンを立ち上げたことから始まった。ノーベル平和賞受賞候補を生んだ署名サイトとは。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

「平和の象徴」である憲法9条を世界に広めたいと話す鷹巣さん(写真中央)=2014年4月19日・代々木公園で

「これから生まれてくる子どもたちのためにも、今、私たち大人の意思表示が求められている」と話す鷹巣さん(写真中央)=2014年4月19日・代々木公園で開催された環境フェス「アースデイ」で

憲法9条をノーベル平和賞に提案したのは、神奈川県座間市に住む30代の主婦・鷹巣直美さん。2013年5月、ネット上で署名を集めるサイト「チェンジ・ドット・オルグ」を利用し、呼びかけた。集まった仲間で市民団体を結成し、推薦資格を持つ大学教授らがノルウェー・ノーベル委員会に推薦し、受理された。

この動きに賛同した署名数は10月2日時点で、合計41万2722票(紙面・34万5354票、ネット署名・6万7368票)に及んだ。集まった署名は、同委員会に提出した。

署名を集めたチェンジ・ドット・オルグは2012年夏に日本版をリリースした。国内の会員数は50万人を超す。これまで、「オリンピックにおけるレスリング競技の存続」(1万684票)や「都議会でのセクハラ野次問題」(9万1338票)、「はだしのゲンを松江市内の小中学校図書館で読めるようにする」(2万1395票)などのキャンペーンが掲載されてきた。どれも、一般市民が立ち上げたものだ。

同サイトから、ノーベル平和賞候補が出たのは、今回で2回目だ。2013年には、「パキスタン人の少女、マララ・ユスフザイさんをノーベル平和賞に」というキャンペーンを、イギリス人のユーザーが立ち上げた。国内でも、SNSでマララさんへの受賞を期待する声が上がった。しかし、受賞はならなかった。

2014年度の候補者には、米国家安全保障局(NSA)の監視活動を内部告発したエドワード・スノーデン氏やローマ法王フランシスコら278の個人・団体が挙がっており、競争率は高い。しかし、たとえ受賞できなくても、一人の主婦がネットで声を上げたこの動きは、最終的に41万人の心を動かしたことに変わりはない。

チェンジ・ドット・オルグの鈴木絵美日本代表は、同キャンペーンを、「オンラインからオフラインへという動きを起こした象徴」ととらえる。「ネット署名からリアルな署名活動に派生することは、世界と比べても日本独特の動き。市民の声を、41万票という形で可視化できた」と評価する。

鷹巣さんの呼びかけは、SNSで話題を集め、著名人たちも、続々と賛同の声を上げている。俳優でリバースプロジェクト代表の伊勢谷友介さんはフェイスブックで「賛同します!」とシェアし、俵万智さんはツイッターで「ノーベル平和賞ものの憲法を持っているって、どう考えたって素敵なことだ」と投稿した。

生活の党・前衆議院議員の三宅雪子氏はツイッターで、「憲法9条がノーベル平和賞を受賞するかどうかはわからないけれど、最有力候補になっている段階で、政府与党は、そのことを重く受け止めるべきなのに、そうなっていないのが残念」と投稿している。

ノルウェーのオスロ国際平和研究所(PRIO)は3日、憲法9条を「最有力候補」に挙げた。ノーベル平和賞の受賞発表は日本時間10月10日午後6時。

◆憲法9条にノーベル平和賞を求めるキャンペーンはこちら

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