全国高等学校デザイン選手権大会(略称デザセン)は高校生の視点で社会や暮らしのなかから課題を見つけ、解決方法をプレゼンするもの。同大会では、同じ高校・高専に通う生徒がチームを組み、プランを発表する。生徒たちのアイデアは続々と商品化し、学校教育の枠を超えた、問題解決力が身につくと評判だ。(今一生)
昨年優勝した富士北稜高等学校の「Sexchange day」は、今年11月に母校で後輩が男女の制服交換を実現させた。「男らしさ」「女らしさ」などの常識を疑うチャンスを作ったこの取り組みは、日本全国の話題になっただけでなく、英語圏や中国圏などのニュースとして世界に発信され、「明日の世界を創造する」ことに一役買った。
デザセンは1994年から毎年開催され、今年で21回を数える。過去の入賞者にも、入賞をきっかけにプレゼンが実現された事例がある。
2010年度に北海道札幌平岸高等学校の生徒たちがプレゼンし、第三位に入賞した「ネガポ辞典」は、長所と短所を表裏一体と考えたユニークな辞典だ。
「暗い」は「落ち着いている」「聞き上手」「自分の世界を持っている」など、ポジティブな意味に変換される。「いじめ」をきっかけに不登校になる子どもが、短所より長所に目がいくようになれるチャンスを作ったものだ。
2011年にはアプリ化され、2012年に主婦の友社から本として出版されると好評を博し、2013年には『ネガポ辞典 実践編―ネガティブな言葉をポジティブに変換』も出版された。
2012年に伊東高等学校城ヶ崎分校(静岡県)がプレゼンし、優勝(文部科学大臣賞)・市民賞・大学生賞・高校生賞を受賞した「レシート日記」は、フッターの部分に数行の罫線を付け加え、商品を買った時のエピソードや気持ちなどを書き込むもの。
「彼への誕生日プレゼントを買った。安物だけど喜んでくれると嬉しい!」などの思い出を残せば、当時の思い出が金額とともにリアルによみがえってくる新しい日記になる。
店の経営者にとっても、顧客が書いた日記をスキャンすることで顧客の声を経営に生かすことができる。大手文具メーカーでは商品化に向けて動き出しているという。
2010年度大会で準優勝した「まくら投げのすすめ」や、2011年度大会で優勝した「あなたのおうちに。開局! 選挙チャンネル」、入賞した「つづきがないない」など、本大会で発表されたアイデアが商品化された。
デザセン事務局を運営する東北芸術工科大学の地域連携推進室の加藤芳彦さんは「学校で教えるデザイン・美術の枠を取っ払って、世の中を変える発想や解決力をもってほしい」と言う。
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