伊藤忠青山アートスクエアは1月26日、「磯部光太郎 日本画展―Biotop生き物のいる場所―」を開催した。ビオトープとはドイツ語がもととなった合成語で人と生き物が理想的な形で住む場所を指し、そのテーマで、四季と自然の生き物を描いた作品33点が展示されている。(早稲田大学高野ゼミ支局長=石黒 真彩・早稲田大学文化構想学部2年)

作品と写る磯部さん

作品と写る磯部さん

磯部光太郎さんは自然と共に生きている。磯部さんは、花に蜂が集まったり、池にトンボやカエルが生息している身近な日本の四季を作品の中で表現している。磯部さんの作品は、鮮やかな色彩でありながら繊細であり、訪れた人を自然の安らぎで包み込む。

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里山など、人の暮らしと共生するような自然の中を、目的は決めず散歩をすることで絵の構成が浮かんでくるのだという。磯部さんは、「目的を持ってしまうと他の景色が見えなくなってしまう。目的を決めずにただ散歩することを心がけている」と語る。

初めは鳥や小動物の作品が多かったが、その動物たちが何を食して生きているのか食物連鎖の一番底辺となる所に着目し、小さな生き物の生活ぶりが面白いと感じるようになる。今では昆虫や爬虫類などの小さな生き物の尊さを大切にして作品を描いている。

磯部さんの描かれる作品の中で、最も目を惹く動物はカエルだ。日本画では、主に草木を描き、四季の移り変わりを表現するものだが、磯部作品には、数多くカエルが登場する。

さまざまな表情や仕草をしたカエルたち

さまざまな表情や仕草をしたカエルたち

磯部さんは「カエルはよく見ると、何かを伺うように屈んだり、人間のような動きをしていて表情が見えるようで可愛らしい」と話す。磯部さんの描くカエルは、遠くを見ていたり、葉の裏に隠れていたり一匹ずつに個性が感じられる。磯部さんが身近な自然を愛し、大切にしてきたからこそなせる業である。

環境活動家が言葉で伝える自然を守ることの大切さを、磯部さんは日本画を通して静かに、しかし目に見える形で伝えている。

青山では、5年前からビオトープを作る活動が盛んである。都会の中心で、青山「土地の記憶プロジェクト」が中心となり、学校と商店街と住民が協力し合ってビオトープを作っているのだ。結果として、そのビオトープでカエルやトンボが卵を産み、ツバメも見ることができるようになった。

伊藤忠青山アートスクエアはアートを通じた社会貢献を標榜している施設だが、青山に根付いてきたビオトープの活動と、日本の守っていきたい自然を描いた日本画のコラボレーションを通じて、地域への貢献を目指している。

磯部さんの作品は伊藤忠商事の2015年カレンダーにも選定された。選定に携わった担当者は「世界に向けて日本の美を伝えることに加え、磯部さんのような若手作家がますます活躍するきっかけになれば」と話す。

伊藤忠青山アートスクエア内にはビオトープも

伊藤忠青山アートスクエア内にはビオトープも

アートスクエア内には、メダカやヤゴも潜んでいる小さなビオトープが再現されており、磯部さんの作品と調和して、穏やかな自然のハーモニーを生み出している。また、会場には作家としては珍しく、磯部さんの作品を描く際のスケッチも多数展示されている。展示会は、1月26日から2月22日まで。入場無料。

磯部さんが描いたスケッチ

磯部さんが描いたスケッチ

なお、会期中、2月7日13:00~は、トークショー「人と生き物を、つなぐもの」、2月11日14:00~16:00には、日本画体験ワークショップ「色紙に植物を描く」(参加料:500円、先着15人)が開催される。詳細はHPを参照のこと。

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