エシカルケータイキャンペーン実行委員会(注1)が3月17日に開催した、「エシカル連続講座vol.3 公開質問状結果から考えるエシカルな鉱物・金属調達~ドッド・フランク法(注2)紛争鉱物対応を超えて~」に参加をしてきました。(「『エシカル男子の会』をつくる会」=稲葉 哲治)

セミナーでは、エシカル調達の「今」について話し合った

セミナーでは、エシカル調達の「今」について話し合った

冒頭、エシカルケータイキャンペーン実行委員会の加治知恵さんより、昨年企業に対して実施した「エシカルな鉱物・金属調達に関する公開質問状2014」(注3)への回答結果の公表が行われました。97社への質問状送付に対し、34社より回答があり、特に製造の下流に位置する最終製造メーカーの回答が多かったそうです。

質問状では、「環境・社会問題に配慮した(エシカルな)鉱物・金属調達を行うための方針や基準があるか」や「それをどのように調査しているか」などが聞かれていました。そもそもが質問状に回答してくれる企業のデータということで、一定の方針や基準を持つ企業がほとんどで、またサプライチェーンの調査を行っている企業も多かったものの、調査精度についてはまだ向上の余地が多いことを感じました。

次いで回答企業より2社、ニコンとパナソニックのご担当者よりそれぞれの取り組みについての発表がありました。

ニコンCSR推進部長袴田淑子さんよりは、会社はドッド・フランク法の適用対象外なものの、SNSから寄せられた個人消費者の声などをきっかけに、エシカルな鉱物・金属調達への対応が始まったことが話されました。

海外のNGOの評価なども重く受け止め、国際基準の帳票を用いながら、現在は社内横断プロジェクトとして取り組みを続けているそうです。特に、ガラスについては強いこだわりをもって調査を行っているというお話でした。

パナソニックCSR・社会文化グループ有川倫子さんよりは、「JEITA 責任ある鉱物調達検討会」としての取り組みも多く紹介されました。

非常に印象的だったのが、企業が紛争フリー製品を求めるあまり、コンゴ民主共和国などの紛争地域との取り引きを忌避してしまい、結果として当該地域で失業・経済困窮などの事態が引き起こされて、紛争をなくすという本質的な問題解決とは逆行するような結果も起きているというお話でした。

サプライチェーンの調査についても、性急に行うとサプライヤーいじめのような状況にもつながり、正確な結果が出にくくなってしまうことが指摘されました。

現地で生活・就業している方のことを第一に考え、紛争フリー商品をゴールとしつつも、まずはそれぞれがサプライチェーンの要所である精錬所を特定していくことの大切さを訴えておられて、大変説得力がありました。

講座を通じて感じたのは、企業は環境・社会問題に対する対応、エシカルな取り組みを、グローバルなビジネスを行うための重要課題と捉えて地道に努力しているとうことでした。参加者もスーツを着た企業の方がほとんどで、講座終了後も盛んな情報交換を行っており、各企業の熱意を感じました。

また、ニコンの袴田さんのお話で、企業に対してエシカルな調達などを求めてくる消費者はほぼ海外からという紹介もあり、日本の消費者の意識の向上の必要性も感じた講座でした。

(注1)エシカルケータイキャンペーン実行委員会
「ヒトもゴリラも傷つけないケータイをつくろう!」をスローガンに、紛争鉱物の採掘問題の認知を広め、製品を通じて採掘問題を解決することを目指している団体。
http://www.ethical-keitai.net/

(注2)ドッド・フランク法
米国金融規制改革法。すず、タンタル、金、タングステンの4鉱物を対象として、コンゴ民主共和国(DRC)及びその隣接国が鉱物の原産国となっているか否かを、調査を踏まえ開示しなくてはならないとしている。2010年に成立し、2014年6月に最初の報告期限を迎えた。

(注3)「エシカルな鉱物・金属調達に関する公開質問状2014」
送付、97社。回答、34社。発送日、2014年10月17日、回答期限、2014年11月14日。
http://www.ethical-keitai.net/metal_questionnaire2014

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