性的少数者の可視化を狙った企画「OUT IN JAPAN」が進行中だ。同企画では、2020年までにLGBT当事者のポートレート写真を1万人撮影する。その目的は、自分らしくある当事者を表現することで、次の人に「つなぐ」こと。企画運営をする認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんに「つなぐ」とは何か、話を聞いた。(オルタナS編集部=佐藤 理来)

レスリー氏との集合写真、LGBT当事者が集まった

レスリー氏との集合写真、LGBT当事者が集まった

「OUT IN JAPAN」第一弾の撮影はレスリー・キー氏が手掛け、92組111人のポートレート写真が企画サイトに掲載中だ。参加者には歌手の中村中さんやタレントのIVANさん、佐藤かよさん、石川大我豊島区議員ら著名人のほか、一般からの参加もある。ポートレートを得意とするレスリー氏らしい力強い写真が、各参加者のカミングアウトに関するメッセージとともに並ぶ。

モデルでタレントのIVANさん

モデルでタレントのIVANさん

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中さんは、企画運営にあたって「カミングアウトするかどうか迷っている人の背中を押すようなものにしたかった」と話す。そこには、自身のカミングアウトで得た経験があったという。同団体は、LGBT含めてセクシュアリティを問わず尊重し合って暮らせる社会を目指している。

電通ダイバーシティ・ラボ(DDL)が今年4月に発表した調査結果では、LGBTなど性的少数者に属する人の割合は7.6%だ(「LGBT調査2015」)。2012年の調査結果である5.2%より増加しており、性的少数者の可視化が進んだことや関連情報の増加が自己認識に影響したのではとDDLは考察している。

渋谷区では同性パートナーシップ条例が成立し話題を集めた。右から2番目が松中さん

渋谷区では同性パートナーシップ条例が成立し話題を集めた。右から2番目が松中さん

しかし、当事者のうちでカミングアウトができている人は約40%。これは、「誰か1人以上に伝えているケース」すべての数で、全体的に公表している人は少ない。

松中さんはNPOを運営する上でゲイであると公表しているが、両親や親戚に打ち明けたのはごく最近だったという。「カミングアウトはあくまでも選択肢の一つだと思っていたし、今もそう考えています。でも、自分の経験から、松中権個人としては『カミングアウトは良いよ』と伝えたい。それだけ得るものは多かった」(松中さん)

大きな転機になったカミングアウトは、両親や兄弟はもちろん、その後に続いた、親戚一同と、高校時代に付き合っていた彼女に対するものだ。昨年の帰省で、両者ときちんと話す場を持った。人生にとって大切な人へのカミングアウトを終えて、「やっと地元をホームタウンだと感じられた」。

松中権さん

松中権さん

松中さんは「東京なら、望みさえすれば透明でいることも可能です。でも地元ではそうはいかない。これまでの人のつながりがあります。カミングアウトせずにいたことで故郷が遠い場所になっていました。どこか幽体離脱していたような感覚がありました」と振り返る。

企画の中では参加者全員の出身地を記載している。「同じ出身地のLGBTを見つけたら安心感があるのでは。勇気ももらえる」という意図を込めた。「誰かに知ってもらえている安心感は大きい」と松中さん。

今後の展開について、松中さんは「レスリーが1000人は自分が撮る!と豪語しているので、しばらく一緒に進めますが、フォトグラファーは色々な方にお願いしたい。日常っぽいタッチのものも出していきたい」と話す。「OUT IN JAPAN」という企画名は、彼が尊敬するゲイの先輩から見せてもらった『Out in America』という写真集からヒントをもらっている。バイクに乗ったり食事をしたり、とLGBT当事者らのいきいきとした日常風景を収録したもの。

第二弾の撮影は、夏から秋にかけて行う予定。現在は10月の関西レインボーフェスタに時期を合わせた企画を計画中だ。

■「OUT IN JAPAN」の企画はこちら

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