ある日。事務所がある病院までの道のりにある雑貨屋さんに遊びに行く。店長のハージムさんは、店の近くを通るたびにいつも手を振ってくれる愛想の良い兄ちゃんだ。筆ペンを使って日本語で名前を書いたら、いたく気に入って、客が来るたびに客の名前を書くように僕に促す。

なんと、店長、客の名前を家族ごと覚えていて、それも書かせたメモをお客に渡し、「ほら、これがお前の名前で、これが親父の名前だ。日本語だぞ?読めるか?」などと上機嫌だ。僕は、ちょっとした広告塔のようである。ちなみにハージムさん、ひいひいひい爺ちゃんまで名前を覚えている。血(特に父性)を大事する文化だからだろうか。

ある日。雑貨屋さんで牛乳と卵を買った。そしたら、ファラーフェルというヒヨコマメのコロッケをタダでくれた。次の日、その店の前を通ったら「寄ってきな」と呼び止められた。帰りに寄るから、と約束してその場を収め、夕方に商品ジュースを飲みながらゆっくりと話した。通るたびに「帰りに寄るんだぞ?」と嬉しそうに言う。その言葉に、すごく元気をもらえる。

ファラーフェル

ファラーフェル

ある日。雑貨屋さんで知り合ったペンキ屋のおじさんから電話がかかってきた。「パーティーがあるけど来るか?」面白そうだと思って快諾した。家まで車で迎えられ、町の中心にあるパーティー会場へと。なんと結婚式だ。こちらの結婚式は男女別々で行なうスタイル。会場に新婦はおらず、生演奏・生唱の中、気分が盛り上がった幾人からのおじさん達がシンプルな踊りを踊る。面白いものを見た、と満足して、ペンキ屋のおじさんの車に乗る。

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