津波が心配される大地震の発生時には、いかに素早く避難をするかが命を守るカギになる。そこで注目したいのが、不特定多数の人に素早く情報を伝えられる「音」。テレビやスマートフォンのニュースなど、様々な情報伝達手段があふれる中で、災害発生時の音の役割について、改めて考えてみたい。(オルタナS関西支局特派員=近藤 浩己)

ホーンアレイスピーカー

ホーンアレイスピーカー

防災で重要なのは「情報をいち早く知ること」。例えば地震が起きたとき、津波が何分後に到達するのかを知れば、避難に向けて具体的な行動を起こせる。こうした情報を知るために欠かせないのが「防災行政無線」と呼ばれる音声警報。街のあらゆるところに設置されたスピーカーから、音で情報を知らせるものだ。

防災行政無線は、全国の8割近い自治体ですでに設置済みだ。内閣府の調査によると、東日本大震災の津波情報などを防災行政無線で耳にした住民は53%。半数以上が防災スピーカーによって避難情報を得ている。ところが、5人に1人が「放送内容を聞き取れなかった」と回答。音は発しているものの、重要な情報を伝えられていない実態が明らかになった。

要因はいくつかある。まず、従来型スピーカーが音声をクリアに届けられる距離が、およそ300mと短いこと。それをカバーするため、対象エリア内に多くのスピーカーを設置せざるを得ないことも、音の重複による聞き取りづらさを招いていると予想される。

こうした問題を解決するために、音響機器メーカー各社も、情報を正確に届けるための商品開発に取り組んでいる。

例えば、TOA(兵庫県神戸市)の「ホーンアレイスピーカー」は、音声がクリアに聞こえる距離を約1000mにまで拡大したスピーカー。音量を上げなくても遠くまで音が届く特性があり、スピーカーの真下にいてもうるさくないのが特徴だ。

音声の到達距離が拡大したことで、スピーカーの設置本数を減らせるのもメリット。音の重複も解消しており、離れた場所にも音をクリアに届けられると、太平洋沿岸部の自治体を中心に急速に導入が進んでいる。

南海トラフ大地震など、大津波が予想される地震では、揺れのあと、わずか数分足らずで津波が襲ってくると言われている。そんなとき、どこにいても情報が伝わる「音」は、素早い避難のきっかけになる。
1分1秒を争うとき、音による情報に気付けるかどうかが、命を左右するボーダーラインになるのかもしれない。

・ホーンアレイスピーカーはこちら

[showwhatsnew]