クラウドワークス(東京・渋谷)は今年3月、女性クラウドワーカー500人に「働き方や育児と仕事の両立」に関する調査を実施した。その結果、回答の7割が、クラウドワーキングを始めて「生活に充実感が出た」と答えた。時間と場所にとらわれないクラウドワーキングは、育児中の女性にとって、「社会との接点を実感できる働き方」と言えそうだ。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
クラウドワーキングとは、記事執筆やロゴ製作など、パソコンを使った業務の一部を企業が主に主婦などに外部委託するもの。打ち合わせから納品までをネット上で完結させるため、完全な在宅で業務をすることもできる。時間や場所にとらわなれないで働けることも特徴だ。
この調査では、クラウドワーキングを始めて「より生活の充実感を感じる」と答えた人は全体の74%に及んだ。
クラウドワーキングをしている岡山県在住の30代の母親は「今までは子育てと家事が生活の中心で、人と話すことは少なかった。クラウドワーキングを通じて社会と接点を持てたことがうれしい」と話した。
クラウドワーキングで希望する収入は、月3~5万円未満が最多(18.6%)で、実際の月収は1~3万円未満(30.2%)が最も多かった。月収20万円以上を稼ぎたいと答えた人は1割以下だった。
女性たちはクラウドワーキングに、時間と場所にとらわれない働き方を求めており、金銭面だけではなく、働くことを通して人の役に立つことに意義を感じていることが分かった。
同社が運営するサービス「クラウドワークス」は日本最大級のクラウドソーシングのプラットフォーム。2016年3月で、登録者は84万人、クライアント企業は12万社に達する及ぶ。創業3年後の2014年12月に東証マザーズに上場した。
■正規・非正規関係ないフラットな働き方を
クラウドワークスの吉田浩一郎社長は2011年11月に同社を立ち上げた。同社は「働き方革命」を掲げて、急激に成長してきた。起業した背景には、社員からの裏切りにあった過去がある。吉田氏は2007年に経営コンサルティングとITシステムの受託開発をメイン事業とする株式会社ZOOEE(ゾーイ)を起業した。
しかし、その会社で、役員から裏切りにあった。その役員はメインクライアントを連れて独立してしまったのだ。吉田氏は話し合いをしたが、引き留めることはできず、収益事業の柱を失った同社からは次々と社員が離れていった。「人生積んだと思った」と振り返る。
社員がいなくなったオフィスに一人でいるとき、お歳暮のクッキーが届いた。そのクッキーを食べたときに、涙が出てきたという。その瞬間に、「おれはさみしかったんだと気付いた」。それまでは起業する理由として、大きい会社をつくりたい、お金を儲けたいという思いがあったが、一人でお歳暮をもらったときに、何のために働くのかを考え直した。「人からありがとうと言われることが、最大の理由だと確信した」。このような経緯があり、クラウドソーシング事業に目をつけ、全財産を投じて、同社を立ち上げた。
吉田氏は3月18日、自民党IT戦略特命委員会に招かれ、自社事業のプレゼンをした。クラウドワーキングの意義を政府に訴えた吉田氏は、「正規・非正規関係なく、フラットな働き方を推進していく流れを感じた」と手応えを話す。
現在、6割の女性が出産・育児を機に仕事を辞めている。そして、共働き世帯の7割で、育児は女性の役割と認識されている。女性に、育児・仕事ともに負担がかかり、30~40代前半の子育て世代の女性で、働きたいけど働けない数は約300万人とされている。同社が掲げる働き方革命に期待が集まる。
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