NPO法人CRファクトリー(東京・台東)はNPOの組織マネジメントを支援する。今年4月で立ち上げから11年目を迎え、これまでに大小規模問わず1000弱の非営利組織の悩み相談に乗ってきた。NPO活動を裏側で支えるCRファクトリーをたずねた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

非営利組織のコミュニティ研究続けてきたCRファクトリーの呉さん

非営利組織のコミュニティ研究を続けてきたCRファクトリーの呉さん

CRファクトリーを立ち上げたのは、呉哲煥(ご・てつあき)さん。呉さんは静岡大学を卒業後、教育関係の企業に就職し、26歳で退職。退職した時期は2001年で、そこからNPO向けのコミュニティ支援事業を、個人事業主として始めた。2005年にはNPO法人格を取り、CRファクトリーを創業した。

呉さんはコミュニティ支援に取り組む理由を、「つながりとコミュニティは社会問題を解決する手立てになるから」と話す。NPO関係者向けに、ワークショップや研修、個別のヒアリングなどを行う。

今では、呉さんのもとを訪れるNPOは後を絶たず、その数は年間に100ほど。昔は、個別の悩み相談はときに2時間に及ぶこともあったが、ボランティアで受けていた。

最近では、コミュニティデザインという言葉が世間に出るようになったが、呉さんが2005年に取り組みを始めた当時は、「ほとんどの人に理解されなかった」と振り返る。気持ちだけが先走って、「うざがられていたと思います」という。

「28〜29歳のときは最も貧乏で、電気代やガス代が払えずに止められたことが幾度もあります。結婚して子どもが産まれて家族を築いていく大学時代の仲間を見ながら俺は何をしているんだろう?と不安に思うこともありました。両親に会うことも気が引けて、実家に帰れずにいました」

NPOだけでなく、学生団体やサークルのコミュニティ支援も行う

NPOだけでなく、学生団体やサークルのコミュニティ支援も行う

CRファクトリーで稼げないときは、個人で、企業の研修講師を務めながら、食い扶持をつないできた。苦しい日々だったが、団体を辞めようと思ったことは一度もないという。居場所があれば人は幸せになると信じて、コミュニティ研究を続けてきた。10年経っても、NPOの悩み相談を無料で受けるのは、非営利組織を運営する苦労を身に染みて分かっているからだろう。

呉さんは自身で、「遅咲きの星」と表現する。「4月で11年目を迎えますが、軌道に乗り出したのはここ2年ほど。残りの8年間は事業規模300万円代でした。壁にぶつかっている新興NPOを勇気づけるエピソードはたくさんもっています」。悩み相談の際には、成功例だけでなく、呉さん自身の失敗談も話し、相手の士気を上げる。

苦節10年だが、「売上規模だけでは測れないものを手にできた」と言う。それが、NPO関係者とのつながりだ。

今年3月、そのつながりを生かして、NPO22団体にインタビューした冊子を発行した。同団体の10年間の集大成と位置づけ、NPOの組織マネジメントをまとめた。

各NPOが行う組織マネジメントの施策を取材した結果、250以上の効果があることが分かった。そのなかから、3つの観点にまとめた。それは、「理念共有・浸透」「関係性づくり」「メンタリング(個別支援)」である。

冊子には、ボトムアップ型で理念を共有する仕組みやモチベーションを高めるメンタリングの方法が掲載されている。

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