伊藤忠商事が運営する社会貢献型ギャラリー、伊藤忠青山アートスクエアは4月2日、青くライトアップした。この取り組みは、自閉症啓発のために、世界中で展開されているキャンペーンの一環。同日、東京・青山に拠点を構える企業や施設などが一体となって青くなり、青山の街が青く照らされた。(オルタナS副編集長=池田 真隆 写真=八木 駿祐)

ブルーにライトアップされた伊藤忠青山アートスクエア

ブルーにライトアップされた伊藤忠青山アートスクエア

4月2日は、国連が定めた世界自閉症啓発デーである。この日に合わせて、世界最大規模の自閉症支援機構オーティズムスピークス(米国)は2010年から、街中の建物を青くライトアップする啓発キャンペーンを行っている。

キャンペーンの名称は、「ライト・イット・アップ・ブルー」。これまでにエンパイアステートビルディング、エジプトのピラミッド、ナイアガラの滝など世界的に有名なランドマークもこの企画に参加し、同日に青くなった建物の数は2万弱に及ぶ。日本では東京タワーや世界遺産の姫路城などが参加した。

この動きは年々広がっている。2012年の参加国は48カ国だったが、今年は147カ国が参加した。日本でも、2014年の81カ所の約2倍となる150カ所が青くなった。

東京タワーもブルーに

東京タワーもブルーに

東京・青山では「青山が青になる」企画が行われた。オリンピック・パラリンピックを2020年に控え、国立競技場に近い青山の街も変わろうとしている。伊藤忠青山アートスクエアやHonda青山ビル、日本オラクルなどの建物がブルーにライトアップされた。企業だけでなく、BMW青山スクエアやレクサスインターナショナルギャラリー青山も青い車を前面に出して展示することでブルーのショールームを演出した。レクサスでは、今回だけのオリジナルドリンク「ウォームブルーサイダー」が来場者に振る舞われた。

また今年は初めて、明治神宮外苑も企画に参加した。通常ライトアップされている聖徳記念絵画館の照明を消して、空に上る勢いで現された国旗掲揚塔の2頭の一角獣が幻想的にブルーにライトアップされた。青山の名所であるイチョウ並木から見える景色が、いつもと大きく異なり、住民や道行く人が立ち止まっていた。

それぞれの団体が、自主的に色々な方法で青になり、街として地域一体となって、障害を個性として理解できる・理解し合える社会の実現を目指す。

レクサスインターナショナルギャラリー青山では、青い車が展示され、ブルーのスペシャルドリンクのサービスが提供された

レクサスインターナショナルギャラリー青山では、青い車が展示され、ブルーのスペシャルドリンクのサービスが提供された

キャンドルハウス青山店のショーウィンドウには、青いキャンドル

キャンドルハウス青山店のショーウィンドウには、青いキャンドル

明治神宮外苑の国旗掲揚塔も青く照らされ幻想的な雰囲気に

明治神宮外苑の国旗掲揚塔も青く照らされ幻想的な雰囲気に

青山一丁目駅のHonda青山ビル

青山一丁目駅のHonda青山ビル

オラクル本社の青山OM-SQUARE

オラクル本社の青山OM-SQUARE

青山通り沿いにはブルーのイルミネーション

青山通り沿いにはブルーのイルミネーション

■18日まで、「MAZEKOZE」アート展

女優の東ちづるさんが代表を務める一般社団法人Get in touchは、2013年から厚生労働省などが主催する東京タワーの点灯式でライブやイベントを開催してきた。4月2日を自閉症の人たちが持つ暖かさと重ねあわせ、「Warm Blue Day」と名づけ、「人を先入観でカテゴライズしたり、排除したりするのではなく、いろんな個性を認めていきたい」という思いを込めて活動している。

ブルーをテーマにしたアート展Get in touch「Warm Blue MAZEKOZE Art Ⅱ」を伊藤忠青山アートスクエアで開催中だ。伊藤忠青山アートスクエアは、伊藤忠商事が社会貢献活動の拠点として展開しており、これまでに、さまざまな社会問題をアートを通して発信してきた。昨年より、Get in touchの理念に共感して、会場を無償提供し、支援している。

このアート展のコンセプトは、「アートはアート!いいものはいい!」。障がいの有無に関わらず、優れたアーティストの作品を「MAZEKOZE」に展示した。東ちづるさんは、「さまざまな特性、個性ある人が当たり前にいる社会。だからこそ、互いに支えあう社会。支えあいたい時に、アタフタおろおろしないように、ふだんから浅く、広くつながっていたい。そのためにも、まぜこぜの心地よさを体験できる空間や時間が大切。ぜひ、この機会に体験してほしい」と語る。

会期中、毎週土曜日14時からイベントが行われる。2日には、「Blue Photo Spot」が設置され、プロカメラマンによるまぜこぜ撮影会が開かれた。撮影チームにはデフカメラマン(聾者のカメラマン)や手話通訳も参加。東京タワーや渋谷の街でも「青いものを身に着けて集まれ!」と呼びかけ、色とりどりの個性の人たちが街に集まり、世界にむけて「MAZEKOZE」が発信された。

9日は、自閉症のラッパー、GOMESSや全盲の佐藤ひらり、両足義足で活動する片山真理などのプロアーティストらをゲストに迎えたライブが行われる。東ちづるさんも司会として自ら参加し、「ちょっとフツーじゃない!色とりどりのライブ」が開催される。(参加費千円)

16日には、大阪市住吉区にある大空小学校を描いたドキュメンタリー映画「みんなの学校」の上映会と長谷部健・渋谷区長らを招いてトークショーを行う予定。大空小学校は不登校児ゼロを目標に掲げ、公立小学校でありながら特別支援教育の必要な児童も同じ教室で学ばせている。違いを理解し、尊重し合う教育を行っている。アート展は入場無料で、18日まで。詳細は、伊藤忠青山アートスクエアの公式サイトへ。

■青くなればなるほど、理解広まる

青い光は自閉症の当事者を勇気づけるメッセージ。自閉症の当事者でも、青い光は目で見ることができ、記憶にも残りやすい。街中が青くなればなるほど、自閉症へ理解を示す人が増えたことを意味している。

自閉症(アスペルガー症候群を含む広汎性発達障がい)とは、対人関係を築くことに困難を持つ障がいのこと。2012年の文部科学省の調査では、自閉症に加え、学習障がい(LD)や注意欠陥多動性障がい(AD/HD)などの発達障がいの可能性のある子どもは、小中学校で16人に1人の割合でいることが分かった。

LIUB(ライト・イット・アップ・ブルー) JAPAN2016実行委員長の佐伯比呂美さんは「今、グローバルに求められているのは、違いを受け入れる社会になること。ふと立ち止まってその素敵な社会を想像してください。世界自閉症啓発デーがそのきっかけとなりますように」と思いを馳せた。

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