コーヒー農園で働く女性たちの労働条件を改善しようと、米国の大学生が動き出している。生産者と正当な価格で、取引できる仕組みをつくり、消費との「架け橋」になろうとしている。このプロジェクトについて、早稲田大学3年で米国のEarlham Collageに留学中の大間千奈美さんが紹介する。
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眠たい朝に目を覚ましてくれるコーヒー。あなたが飲むコーヒーはどこからやってきたのでしょう?
今回は生産者であるコーヒー農園で働く女性たちに出会った5人の学生が、彼女たちが抱える問題を解決しようと始めた取り組みについてご紹介します。
5人が目指すものは「生産者と消費者を繋ぐ架け橋を作ること」。そんなプロジェクトをサポートするために、Ready Forでクラウドファンディングに挑戦しています。
米国はインディアナ州にあるリベラルアーツのEarlham Collage。全校生徒千人ほどの小規模な大学には47カ国以上の国から生徒が集まっています。
同じキャンパスで生活する中で、生徒たちは、お互いが持つたくさんの「違い」を目の当たりにしながら、世界で起きているさまざまな問題を身近な友だちの問題として考えさせられる機会が沢山あります。
そんな中、「自分たち学生にできることはなんだろう?」という共通の問題意識を持った専攻も国籍も異なる5人の学生がいま、ソーシャルビジネスに取り組もうとしています。
ソーシャルビジネスは「社会課題を持続的に解決するためにはじめるビジネス」のこと。今回のプロジェクトで支援するのは、彼らと同じく私も大好きなコーヒーを生産するコスタリカの女性農家さんでした。
立ち上げたプロジェクトの名前は「Bean Voyage(豆の旅)」。彼らはフェアトレード最低基準より高い25%以上の価格でコスタリカの女性農家さんからコーヒー豆を仕入れ、その豆1パックにつき、スキャンすると買った金額のどのくらいがコーヒー農家に届いているか可視化するバーコードシステムを取り入れたウェブサイトを作ります。
それだけではなく、コーヒー豆を育てる過程で、農家さんの思いをつづったメッセージカードを商品とともに届ける予定です。今回はそんなBean Voyageのプロジェクトをサポートするため、事業を始めて1年目に取引するコーヒー豆を仕入れるための費用をReady Forのクラウドファンディングで集めています!
https://readyfor.jp/projects/bean_voyage
そもそも彼らが女性コーヒー農家さんに出会ったきっかけは、メンバーの多くが参加したコスタリカでのフィールドワークでした。アメリカ国内のみならず、日本でも高い需要のあるコーヒー産業。そんなコーヒー産業の土台を支えるコーヒー豆の農園の現場を見た彼らは、地元の農園、特に女性農家さんに対するコーヒー豆販売を促進する市場へのネットワークが限られているために、コーヒー豆の栽培から十分な収入が得られていないという現実を目にしました。
彼女たちがコーヒー豆を出荷する先は主に大規模なコーヒー協同組合。価格設定の主導権はもちろん協同組合が握っています。地元での販売もしているものの前者同様、収益は生活を支えるのに十分とは言えませんでした。
「自分たちの好きなコーヒー。それを作ってくれる人が生活に苦しんでいることはおかしいのではないか」という思いを抱いたと言います。
さらに彼らが疑問を抱いたのは男女格差の問題でした。農園での作業の多くは女性の手によって行われ、その膨大な作業の傍ら、家事や子どもの世話までも彼女たちが一手に押し付けられているという現実。
それでも入った収入は男性に圧倒的な主導権があり、得た収入をどのように家族に割り振るかなどの家庭内での発言権を奪っていました。そんな状況はさらに彼女たちが積極的に彼女たち自身のビジネスの決定権に関わることを阻み、自立する機会をも奪っていたと言います。
そんな現状を伝えること、そして彼女たちの自立を支えるために、コスタリカに行ったメンバーを含め、それぞれのバックグラウンドから共通の問題意識を持った5人のメンバーが動き始めました。
そのチームが今の「Bean Voyage」だったのです。彼らのポリシーは 「Think global Act Local (グローバルに考え、ローカルに行動する)」。 先進国にいる消費者が途上国にいる生産者の生活を搾取している現状、男女格差など、コスタリカに限らずグローバルに見受けられる社会問題を解決するには途方もない道のりが待っています。
自分たち学生にそのシステムを変えることはできないかもしれないけれど、ローカルになら始められることがある。それが今自分たちにできることであり、社会問題を解決する第一歩なのではないかという思いが、彼らの動機となっています。
彼らが変えたいと思うのはコスタリカの女性農家さんの現状。それがどうやったらもっと大きなムーブメントとしてグローバルな問題を提起することになるのだろう?試行錯誤の末にたどり着いたのが「生産者と消費者を繋ぐ架け橋を作ること」でした。
コーヒーだけではなく、日々の生活の中で私たちが消費するもの全てにはつくる人がいること。届けてくれる人がいること。この当たり前は日本もアメリカも、コスタリカも変わりません。それでも、商品にお金を払う際、手にするわたしたちが、毎日その先にいる人のことを想像するにはなかなか難しいかもれません。
「離れていても女性の農家さんをもっと身近に感じる工夫があれば、コーヒーを飲むときに彼女たちのことを思いやるきっかけになるかも」――そんなアイデアの元、ウェブサイトやストーリーを描いたカードを送ることで、消費者である私たちが、見えなくても存在している繋がりを意識する機会を作りたいと考えています。
「Bean Voyage」のクラウドファンディングは、5月30日まで。
日々の消費の選択は自分が「だれ」を応援しているのか、「どんな」社会がほしいのかの意思表示になっている。そんな気づきが社会全体で共有されれば、倫理的に抜け穴だらけの社会も少しづつ変わるかもしれません。
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