日本が五輪史上最多となる41個のメダルを獲得して沸いたリオ五輪では、50人以上のLGBT選手が出場した。実はこの人数も、2008年の北京五輪(10人)、2012年のロンドン五輪(23人)を上回り、五輪史上最多だ。なぜ、LGBT選手が過去最多だったのか、その理由を考察した。

国際オリンピック委員会によると、リオ五輪に出場した選手数は、10,500人。世界のLGBTの割合が、約7%なので、単純に計算しても、700人はいてもおかしくない。そのように考えると、この約50人という数字は決して多くはないことになる。

自ら表明していないLGBTの選手がまだいることも十分に考えられるが、過去の大会と比較すると、大幅に人数は増えた。今大会は多様性をテーマの一つに掲げており、それを象徴する結果になった。

2012年のロンドン五輪で英国女子ホッケーチームは銅メダルを獲得した。そのときのチームメイトだった、ケイト・リチャードソンウォルシュ選手(36)とヘレン・リチャードソンウォルシュ(34)選手は、2013年に結婚した。同性カップルが、そろって五輪に出場するのは、初の出来事だった。

国際オリンピック委員会(IOC)がLGBT及び多様性に重きを置いている背景には、2014年のソチで開かれた冬季五輪での「反省」があるからだろう。

ロシアでは2013年6月に、反同性愛法が成立した。未成年者への同性愛プロパガンダを禁止する法律である。法律成立以降、ロシア各地では外国人旅行者も含めLGBT当事者への暴行が横行した。

この法律への抗議の声は国際社会から多く出た。米国のオバマ大統領、フランスのオランド大統領、ドイツのガウク大統領など欧米首脳がソチ冬季五輪の出席を見送り、世界的アーティストや俳優なども異議を唱えた。

この過去の教訓を生かし、IOCとしては、多様性を掲げ、LGBTに重きを置いたのだと考えられる。

2020年開催の東京五輪でも、「多様性」をコンセプトに掲げている。五輪は世界中から注目が集まる絶好の機会だ。日本では、同性婚はまだなく、LGBTに関する教育も十分に行われていない。本当に多様性を象徴する大会にすることができるのか。勝負の見せ所である。

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執筆者:渡邊伶(早稲田大学教育学部4年)
専攻は教育社会学で、教育と社会階層に関して勉強しています。特に、「子どもの貧困」の問題や、「キャリア教育」に関心があり、NPO法人Learning for Allの非常勤職員、一般社団法人Foraという団体の理事を務めています。Learning for Allでは、学習支援を全国に広めるべく、団体のノウハウを自治体に届ける仕事をしており、Foraでは、高校生に学校現場で、進路に関するワークショップを行っています。一年間、よろしくお願いします!

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