「子どもの貧困」に該当する子どもの割合は、年々深刻化している。貧困率の増加とともに、2015年の児童虐待件数は10万件を超え、この25年間で100倍に増加した。連鎖する貧困について考えた。(向井里花)
虐待を受けた子どもは学習遅れに陥りやすい。家に閉じこもりがちになり、不登校になることがその理由の一つだが、親と過ごさないことでさまざまな教育機会を失っている。
例えば、「親からの絵本の読み聞かせ」。読み聞かせをしてもらえないことで、文章に触れる機会が少ない。「親との買い物」もそうだ。買い物などで数字を目にする機会がなかったりする。
さらに、自分の寂しさや傷ついた心を受け止めてくれる大人が身近にいないことで、大人に不信感を抱くようになってしまう。そうして、学習のベースとなる物事への関心や意欲が湧かなくなってしまう。
貧困に陥ってしまう家庭の多くは、親自身が貧困家庭で育った割合が高い。貧困の連鎖に巻き込まれてしまっているのである。
国の支出を見てみると、高齢者を支援する社会保障費が7割で、児童保護施設への学習支援に対する政府の予算は極めて低い。ほとんどの地域で、ボランティアに支えられている状況である。
生活に行き詰まり、どこに相談していいか分からず悩み苦しんでいる親に対して、国や地域が手を差し伸べない限り、子どもが持っている「守られる権利」を守ることができない。
貧困による社会格差を断ち切るために必要なのは、親にも子どもにも「身近に頼れる人がいる」環境づくりだ。行政による支援の強化を求めると同時に、NPO法人3keys(スリーキーズ)のような子どもの学習支援、啓発活動を行う団体の活動を支援していきたい。
執筆者:向井里花(福岡教育大学教育学部4年)
広島出身の、カープ女子。趣味は野球観戦、日本酒、フラダンス。夢は自家製チーズ屋さんを営むこと。福岡教育大学では家庭科を専門的に学び、現在は消費者教育分野の研究室に所属。売る人も買う人も幸せになる「エシカル消費」の浸透を目指し、企業側からのアプローチや、情報提供方法について研究中。