TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)「ニュース女子」が1月2日、沖縄・高江のヘリパッド移設問題を取り上げ、「反対派には日当が支払われている可能性がある」と報道した。これを受け、移設の反対運動を行う反レイシズム団体の代表らが、制作会社のDHCシアター(東京・港)に抗議し、SNS上でDHC不買運動へ発展した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同番組では、軍事ジャーナリストの井上和彦氏が沖縄・高江を訪れ、住民らに取材を行った映像が放送された。そのなかで、ラジオDJの手登根安則氏は、「高江に来る人に5万円を支給する」と書かれたチラシと普天間基地周辺で発見された茶封筒を井上氏に見せた。茶封筒には「光広」と「2万」と書かれ、番組ではこれらを根拠に、反対派が日当をもらっている可能性が高いとした。
同番組は、年配の男性コメンテーターが、若い女性タレントの素朴な疑問に答えながら進行していく。
映像を見たタレントの八田亜矢子氏が、「反対している人には、彼らなりの正義感があって、活動していると思っていた。この映像を見て、お仕事として反対されている方が本当にいるのか疑問に思った」とコメント。住民が基地反対派の翁長雄志知事を選出したことを挙げて、「沖縄住民の大多数の意見を知りたい」と続けた。
井上氏は、「大半の沖縄住民から、米軍基地反対という声は聞かない」と返した。八田氏が「そうなのですか」と聞き返したが、MCの吉木りさ氏が他のゲストに話を振って、話題が変わった。
この放送を受け、SNSで同番組への抗議の声が殺到している。番組内で取り上げたチラシを発行している、反レイシズム団体のりこえねっと(東京・新宿)共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)氏は、自身のツイッターで、「金をもらってTV出演し、ヘイトを垂れ流している人たちは、自分が金のためならなんでもやるのだから他人もそうだと思いこんでいる」と投稿した。
のりこえねっとでは、高江の現状を伝えるために、特派員を募集しており、交通費・滞在費として5万円を補助しているが、これは現地の情報をSNSで発信する人を対象にしている。番組では、「5万円を支給」とだけしか紹介していなかった。
辛氏は、東京メトロポリタンテレビジョンには東京都の資本も入っているとし、ツイッターで「株主として東京都がこれを放置することは、東京はヘイトを垂れ流す都市であると宣言することだ。本気でオリンピックをやる都市として真っ当なのか。これから、国連人種差別撤廃委員会へ提出する報告書を作る」とも投稿している。
SNSでは、「DHC不買」というハッシュタグをつけて、同番組やDHCへの批判的な投稿が増えている。
同番組は、DHCシアターの主要株主であるDHC(東京・港)の持ち込み番組として、2015年4月から始まった。持ち込み番組では、放送するTV局が企画に関わることは少なく、基本的に外部の制作プロダクションが映像をつくり、TV局はその映像を流すことだけを行う。制作費が掛からないので、収益率が良い。同番組を制作しているのは、DHCシアターとボーイズ(東京・港)の2社。
映像ジャーナリストで、OurPlanet-TV代表理事の白石草(はじめ)氏は、「この番組は、タイトルにニュースと銘打っているが、内容的に地上波に相応しいのか疑問だ」と指摘する。
さらに、白石氏は「放送局である東京メトロポリタンテレビジョンが自社で制作している番組は少なく、アニメも含めてほとんどが持ち込み。貸しビル業者のように、電波を貸して儲けている。東京都、中日新聞社、エフエム東京など公共性の高い事業者が筆頭株主なので、公共の電波がどうあるべきかもっと考えるべきだ」と批判する。
白石氏は、この番組は「これまでも偏った内容を放送してきた」とし、「さすがに今回は明確に事実に反する。BPOへ申し立てが行われる可能性が高いと思うが、局側が制作に直接関与していない持ち込み番組の初の事例になるのではないか」と話した。
[showwhatsnew]