世界最貧国の一つであるバングラデシュ。ある物乞いの少年が現地の革工場に「働かせてください」と頼みに来た。この少年は「18歳」と申告し、工場で働くことになったが、話を聞いていくと14歳だったことが分かった。18歳未満をフルタイムで働かせてしまうと児童労働に当たるが、工場を辞めさせてしまうとこの先生きていけるか不明だ。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

社会起業家の社会問題の考え方について話す田口社長(真ん中)と鈴木副社長(右)

社会起業家の社会問題の考え方について話す田口社長(左)と鈴木副社長(右)

物乞い少年を働かせることは是か非か。この議論が起きたのは、去年の年末に東京で開かれた「第1回SEED BUSINESS FORUM」で。これは、ソーシャルビジネス業界大手のボーダレス・ジャパン(東京・新宿)が開いた同社の社会起業家創出プログラム「SEED」の説明会だ。SEEDでは、社会起業家を目指す人材を公募し、最大3000万円の出資を行う。

同社は、ビジネスで社会問題を解決する「ソーシャルビジネス」を提唱したムハマド・ユヌス氏(グラミン銀行の創業者)がノーベル平和賞を受賞した翌年の2007年に創業した。貧困や児童労働など10の事業を行い、2016年度の売上高は30億円を見込む。

物乞い少年の雇用問題に関しては、同社の田口一成社長が会場に問いかけた。同社では、バングラデシュに革工場を持っており、貧困層の雇用を行っている。この話は去年の年末に起きたことだ。

その少年が14歳だと分かったため、同社では協議を行った。すぐに辞めさせなかった理由について、田口社長は、「10歳くらいまでなら物乞いとして生きていくことができる。でも、14歳では物乞いとして食べてはいけないから」と話す。

結果としては、その少年は工場で働き続けることになった。ただ、中学生であるので、フルタイムでは働かせず、午前中だけ工場に来てもらい、午後からは学校に通わせるように話し合っている。現在も協議中だ。

児童労働の定義は、18歳未満に危険な労働または義務教育を妨げる労働とされている。この定義をもとに考えると、「児童労働」になる。だが、もしこの少年の申し出を断っていたらどうなるのだろうか。

田口社長は、社会問題にアプローチする社会起業家を目指すなら、「現場の当事者になったつもりで考えるべきだ」と話した。メディアの情報を鵜呑みにして、良いか悪いか判断するのではなく、現場を見て考える癖をつけていくことが大切だと強調した。

社会起業家を目指すために、その社会問題を解決したいという志が最も必要だとしたが、独りよがりの熱意ではなく、「社会問題の当事者がしっかり生活していけて、誇りを持ち、喜びを持てるかに主眼を置くことがポイント」(鈴木雅剛副社長)とした。

同社では、「マーケットから放置された課題」を社会問題と定義している。サービスの提供者が貧困状態で苦しんでいる人たちなので、「儲からない。その結果、誰も相手にせず、放置されてしまう」(田口社長)。

同社が定義する社会問題

同社が定義する社会問題

そもそもこうした社会問題を生み出している背景には、「行き過ぎた資本主義」があるとし、その犠牲になった人たちを助けることが、「ビジネスパーソンが本当にやるべきこと」と力を込めた。

そもそもニーズも成長マーケットもない領域に参入し、社会問題を解決する事業を行っていかなければいけない。だからこそ、「けっこうきつい闘い」と言う。

だが、そのような事業が失敗することは、「社会的損失だと思う。だから、僕らの会社は社会起業家のために設計した。成功するための事業ノウハウがあり、経営、営業、デザインなど各分野にプロフェッションナルを揃えている。ビジネスで解決したい社会問題があるという人にはぜひ来てほしい」と話した。

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