タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆米の飯

「形ばかりだった農地委員会は日本の敗戦で大きく変わった。占領軍GHQ、つまりガバメントヘッドクオーター、アメリカ進駐軍の最高司令機関は大地主の農地を民主主義の名の元に小作委任達に分け与えてしまったんだよな」
「じゃあ農地委員会はもう用無しになったってわけだ」啓介が言った。
「そうだ、だから『勝ち取った民主主義を守って、皆で農業を盛り立てましょうね』って言って農業委員会をなお変えたんだ」
「で、何やってるんですか」と啓介。
「それがその、昔の地主会のように今は新地主会になっちゃったってわけよ」
「農協とおなしこんじゃ」敏夫が言った。
「それでも戦後から10年くらいは農業委員会も農業協同組合もよく機能していて、米の大増産に寄与した」末広は講談師のような口調になって続けた。「農業委員会は農地の維持、農業協同組合は農薬や化学肥料の普及、農業の機械化を推進した。それでなんと米の収入は3倍のも4倍にもなったんだ」

米合

「じゃ、コングラチュレーションじゃないですか」啓介が言った。
「それが昭和の30年代に入ると、そうでもなくなったんだ」
「豊作がなぜ悪いんですか」
「俺たち今朝何食べた?」
「ベーコンエッグトーストです」
「なっ、米喰ってねえよな」
「喰ってねえです」と敏夫。
「日本人の食生活の変化よ」
「戦争に負けた日本は米国の小麦を押し付けられて、パンを食べるようになってしまっていたんだ」
「米は余りますね。農民は困りますね」と敏夫。
「ところがそうでもねえんだ」
「なんで」と啓介。
「食糧管理法ってのがあって米は全て政府が買うことになっているからよ」
「なんで」
「以前は米が足りなかったんだ。だから放っておけば米の価格は高騰して庶民の口に届かないようになってしまう」
「そこでどうしたどうした」と啓介。
「さのよいよい」と敏夫。
「だから政府が全ての米を一定価格といっても強制的な安値で買い占めて再分配したのよ」
「その金はどこから」と啓介。
「税金だけど」
「じゃ、同じじゃないですか」と敏夫。
「まあそういう事だ」
「そういうこんです」と敏夫。
「人の金での商売だ」
「足りなきゃお金を刷るだけだ」と啓介。
「農家は不満だったが、庶民は助かった。でも米余りになると、安く仕入れてもっと安く卸していた米が、米余りで安くなったから、今度はもっともっと安くしなければだれも買わなくなったんだ」
「でもだからといって政府は米をもっと安く農家から仕入れられんですよ」と敏夫が言うと啓介は「なんでだよ」と敏夫に言った。

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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