2月17日、東京・大手町にあるみずほ銀行の前に、アイヌ民族やニュージーランドのマオリ族を始めとする市民グループが集まった。彼らは米国で進む石油パイプライン建設への投資撤退を求める署名を同行に提出した。当日の模様を報告する。(寄稿・棚尾 真理絵)
この署名は、米・ノースダコタ州で計画が予定されているダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)の建設に関する投融資撤退(ダイベストメント)を求めた。この建設に投融資している日本の三大銀行(みずほ銀行、東京三菱UFJ銀行、住友三井ファイナンシャルグループ)に対し、11,300人の署名が集まった。
DAPLには世界40弱の銀行が投融資しており、投融資撤退を求める動きは東京だけでなく、国際的に行われている。
■DAPLとは?
ノースダコタ州からイリノイ州までの1886キロに渡って石油パイプラインを建設するもの。ノースダコタ州にあるネイティブアメリカンのスー族の保留地であるスタンディングロックも計画地に含まれている。同地には、スー族にとって唯一の飲料水の水源である湖があり、スー族は当初から建設に反対していた。
この事業は、ネイティブアメリカンの聖地に危害を加えるとし、2016年4月から、500を超える先住民族と数万の支持者が、現地で非暴力の抗議を続けてきた。
2016年12月4日には、パイプラインの建設は合衆国連邦法により一時的に停止された。しかし、1月24日のトランプ新政権による人権や環境権を無視した大統領令で、この計画が再び進められた。
現在、DAPLをめぐる戦いの最前線にいるスー族は、緊迫した状況に立たされている。
2月初旬、トランプ大統領のダコタ・アクセス・パイプラインとキーストーンXLパイプラインの建設を進めることを求める大統領令に従って、米国陸軍工兵部隊が、プロジェクトに関する環境調査を中止し、建設を完了させる許可を与えると発表した。
2月22日には、DAPLの建設に反対し、現地にキャンプを設営して抗議運動を続けてきた人々に対して、行政側による強制的な取り締りが始まった。
状況は過酷になる一方だが、スタンディングロックの人々と彼らの清潔な水への権利を支持することを表明する投資家も現れている。特筆すべきは、米国で最大規模を持つ公的年金基金の一つであるカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)が、主要な米国の銀行と国際的な銀行に対し、その他100以上の機関投資家とともに、DAPLのルートを変更するように呼びかけた。
この呼びかけを行った、機関投資家の運用資産総額は6,530億米ドル(約74兆円)。CalPERSなどの機関投資家がこういった重要な市民運動を積極的に受け入れているということは、現在も運動に関わっている人々へ希望をもたらしたであろう。
アイヌ民族とマオリ民族の交流を推進するアオテアロア・アイヌモシリ交流プログラムの代表である、シマダ・アケミさんは、東京での署名提出に参加した。署名提出にあたり、シマダさんは水の重要性について強調し、「水はアイヌにとっても、すべての生き物が生きていく上で必要なものです。だからこそ、私たちアイヌは、日本の銀行にダコタ・アクセス・パイプラインから撤退するように申し入れているのです」と話した。
もし人々が、「行動を続ければ、(プロジェクトを止める)機会がやってくるでしょう。だから私は努力し続けたいと思います」と続けた。
署名提出者の一人、オカザキ・タカさんは、銀行が説明責任を果たし続ける上でメディアが果たす役割について強調した。メディアは「みずほ、三井住友、三菱東京UFJの広報部と連絡を取り、この署名についてどのように対応するのかといった簡単な質問を聞くべき」と話した。
パイプライン建設の人道的・環境的な影響に深い懸念を表明するために、異なった背景を持つ人々が集まることはとても美しく、素晴らしいことだ。情報を持つ市民の力が変化を生み出すということを強く信じさせる出来事である。
環境、人道、社会問題などが加速する中で、気候変動の問題に対してまったく関与がない人はいないだろう。点と点をつなぎ、私たちの生きる権利を脅かす問題に対して何ができるのか考えることを促すのが、私たちの社会的義務だと考える。
スー族への人権侵害は、直接日本の銀行の投資活動に関係がある。DAPLに投資している全ての日本の民間銀行が、金融機関にプロジェクトファイナンスの環境社会リスクの特定・評価・対処を求めるフレームワークである赤道原則に署名している。
先住民族の生活への深刻なダメージの可能性や地元の抗議者への暴力的な取り締まりは、赤道原則に反する行為だ。
東京でのアクションをスタンディングロックでの運動につなげることは、私たちが本当の変革を求めて声を上げることを後押しする力と情熱を与えてくれる。
個人としてできることもある。これらの銀行へダコタ・アクセス・パイプラインへの投融資を止めるようにインターネットから簡単にメッセージを送ることができる。もちろん直接電話をしたり、手紙を書いたりすることも可能だ。ぜひ銀行にあなたの一声を。
当日の模様を収めた動画↓