印象的なタイトルが目を引く。著者は、ライブドア元社長の堀江貴文氏。2011年4月、ライブドア事件を巡る証券取引法違反の罪で懲役2年6か月の実刑が確定した。現在長野刑務所で服役中である。


本書では、堀江氏が東日本大震災を経て考えた、日本復興のひとつのモデルを提言する。


震災直後、Twitterで情報を得ていた誰もが堀江氏のリツイート(註:自分のフォロワーに向けて情報を拡散すること)を一度ならずとも見たであろう。60万人を超えるフォロワーを持つ堀江氏には膨大な量の安否確認ツイートが押し寄せた。被災地の身内と確認が取れない市井の人々が著名な堀江氏の力を借りて、被災地の情報を得ようとしたのだ。


だが、しばらく経つと「安否確認用のメディア」から「議論の場」へ変化した。堀江氏のツイートから自発的に情報サイトを立ち上げる者が次々と出てきた。本来ならば公的機関が積極的にやるべき仕事を、ソーシャルメディアを活用したボランティアが次々に行動していく様からは日本政府の無能さを感ぜずにはいられない。


「原発事故がなければ、(中略)私もここまで『国家』の存在意義を否定しなかった」と述べる堀江氏の描く未来の国家像は、決して希望的観測に基づくものではない。実業家としての今までの経験と、東日本大震災後のソーシャルメディアの活躍から導き出される「新国家計画」とは何か。


驚くべきは、放射能で汚染された地域を宇宙港とし、宇宙関連ビジネスを呼び込もうとする計画だ。同情で義捐金を集めるよりも、まずは世界中からベンチャー企業を集めて経済活動が回る仕組みを作ること。復興というと、震災前の状況に戻すことを考えてしまいがちだが、新たな価値観を以って挑戦していくことも必要なのではないかと思える。


既に述べたように、堀江氏は現在服役中である。「新国家計画」が現実になることを望んでいるわけではない。あくまでタイトルにあるように、「君たちに東日本大震災後の世界を託す」のだ。
先の見えない暗雲の中で、舵を取れない政府に夢を託すより、まずは自分自身の力を信じたい。