「選挙に行くだけが政治との関わりではない。もっと身近にある問題や好きなことを通して、政治と関わることはできる」。若者と政治をつなげる活動を行うNPO法人YouthCreate代表の原田謙介氏はこう話す。若者の政治参画を進めるために、世界と日本で行われている取り組みを紹介する。(松尾 沙織、谷 美奈帆=法政大学経営学部4年、中山 裕太=中央大学経済学部3年/山﨑ゼミ)
あなたは政治と聞くと何を思い浮かべるだろうか。
「選挙」「難しいこと」「自分とはあまり関わりがない」――と思う人も少なくないのではないだろうか。一方で政治について関心のある若者であっても、「意識高い系」というレッテルを貼られることを恐れて、友人同士の会話の中で政治について話しづらいという声をよく耳にする。
平成25年に行われた内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の若者の 54.5%が「自国のために役立つと思うようなことをしたい」と回答している。
諸外国と比較しても日本が一番高い。一方、日本の若者の政治に対する関心度は、50.1%が『関心がある』と回答しており、これは欧米の国々と比較すると低い。
「私の参加により,変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」と思う若者は30.2%で、こちらも諸外国と比較すると低い。つまり、何かしたいと思いを持つ若者は多いが、アクションを起こすにはハードルを高く感じている傾向にあるのだ。
海外ではこういった人々を動かすためにどのような方法をとっているのか。他国の投票率を向上させた施策について紹介しよう。
投票率が高いブラジルでは、投票に行かなかった人へは最大35バレル(およそ1,200円)を支払うといった罰金がある。さらに、それが3回続くと有権者資格を剥奪され、身分証やパスポートも発行されない。さらに公立学校にも通えなくなり、銀行でお金を借りられなくなるなど、厳しい罰則が設けられている。学生にとっては切実な制度だ。
しかし、投票の義務化には弊害もある。ブラジルでは政治に関心がない人にも投票をさせるため、票の売買が行われてしまっている。そのため、ある地域ではATMが使用禁止になっている。もし日本での実現を考えるとしたら、注意が必要だ。
一方、若者の投票率80%以上を継続しているスウェーデンでは、若者のほとんどが政党の青年部に所属している。ここは、12〜13歳から所属が可能だ。若者には役が与えられ、各グループに分かれ、政党のホームページで具体的な政策を調べる。
そして、政党ごとの情報を交換しながら議論を交わし、それぞれの知識を多角的に深めることが活発に行われている。このように、若者たちが普段から政治について考える時間が多いことが投票率に直結している。
一風変わった施策としてオーストラリアでは選挙会場に国民の大好物であるソーセージ屋の屋台を置くということも行っている。日本でも選挙フェスが開催されたが、彼らは投票を”イベント”にし、選挙に行くことを楽しみの一つにしている。
日本において、このような政治参画促進に一役買っているのが、NPO法人YouthCreateだ。同団体は、政治への関心を持つことが「かっこいい」と思われる社会のビジョンを描く。若者が政治を「学ぶ」から「参画する」へ変化させるための仲介的な役割を担う。
未来の日本を支える若者が政治に無関心であることは、これまで説明してきた通りだ。原田さんは、現状を打開するための施策として、まずは政治を「自分ごと」にすることが重要だと指摘する。
政治とのつながりを知ることができる勉強会「Youth THINK」がその一つだ。これは省庁と連携して開いているイベントで、現役官僚をゲストに迎えて政策や制度についてディスカッションするものだ。
さらに、難しさや真面目さだけでない政治の新しい切り口をつくるために、気軽に政治について話すことができる場「Vorters Bar」も運営している。これは政治家と若者がお酒を飲みながら交流するもの。政治家と気軽に話し合うことで、政治に対するネガティブなイメージを払拭することを狙っている。
若者が政治に対して声を上げないことは、 「自らの世代や次世代に対しての責任を放棄することになるのではないか」と原田氏は危惧する。彼らの取り組みによって、将来の日本をつくる若者が、「政治は学ぶことではなく関わること」だと考えていけるようになれば、政治参画はさらに進んでいくはずだ。
*この記事は日本財団CANPANプロジェクトとオルタナSが開いた「NPO大学第2期」の参加者が作成しました。
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