東北地方太平洋沖大地震で被害を受けた被災地に赴き、復興支援活動をした若者と大人が現地に行って感じた思いをありのままに語る座談会の第二回目。
今回のテーマは「これからの支援活動について」
今回はNPOパブリックリソースセンター理事の鷹野秀征さん、法政大学の三井俊介さんにお話しを伺った。
避難所単位から仮設住宅単位での支援に切り替わっていくなかでこれから必要なニーズとは何か。今の日本に求められるリーダー像とはどのようなものかなど、被災地を見たからこそ分かる大切なものを今、伝える。
*語り手
鷹野秀征 NPOパブリックリソースセンター理事 ソーシャルウィンドウ株式会社代表 twitter@yukitak
アクセンチュア、上場企業役員、創コンサルティング(CSR)を経て現職。2001年寄付サイトの先駆けガンバNPO(現GiveOne)を創設。社会起業大学講師。 現在、仮設住宅の生活快適化のため、経済的自立のため、多数の企業と被災地の架け橋になるべく活動中。
三井俊介 法政大学4年 学生団体WorldFut共同創設者 学生非営利組織SET共同発起人 個人blog 「生まれ行く光の中で」twitter:@shunsuke_1223
学生非営利組織SETで企業、NPOと協力して支援物資の搬出、搬入を行い、これまでに衣類中心に約1000箱以上を届ける。また、三井自身がSETを代表して単身で岩手県陸前高田市広田町に現地入りして、ボランティア体制の構築を築くことに成功する。広田町の方と信頼を築きあげたからこそできることを、学生の強みを活かして取り組んでいる。今夏には若者約80人の現地入りプロジェクト(ボランティアツアー)を実施。
*聞き手 池田真隆(オルタナS特派員)
━被災地ではぞくぞくと避難所が解体しだして、仮設住宅へ入居する人が増えています。今までは避難所単位での支援が行われていましたが、これからは仮設住宅一軒単位での支援になっていくと思います。そのような状況で今後はどのようなニーズが必要とされるでしょうか・・・
鷹野「まず、仮設住宅がどのようなものなのかを知る必要がありますね。仮説住宅でも住宅メーカーが作ったものとプレハブメーカーが作ったものではクオリティが違います。仮設住宅にも格差があるのでそこを埋めていくことは一つのニーズですね。」
三井「どのように解決していったほうがいいでしょうか。」
鷹野「行政に頼りすぎずに、民間企業の力を借りても良いでしょう。例えば縁側などを仮設住宅につけるのにも、提供してくれた企業の名前が入った縁側を設置してみても良いと思います。企業にも何かしらのメリットを与えて、支援活動に巻き込めればいいでしょう。」
三井「今後の企業の支援活動で問題点などはありますか?」
鷹野「今からの支援活動は経済的自立を目指したものであるべきだと思います。確かに現地の方は財産を失ってあまりお金は持っていないのですが、それでも経済を回していかなければいけません。しかし、今でも食料は避難所では無料で手に入れることができます。その中でもお金を払ってでも欲しいと思ってもらえる商品をいかに生み出せるかがポイントだと思います。その土地ならではの特色を活かしたものが良いと思います。ただ何でも与えればいい支援は終わりましたし、かえってそれはモノが溢れて経済的自立を遅らすことになります。」
━企業が支援活動に参加するメリットとは・・・日本の高齢化社会の先にある姿・・
三井「実際、企業は支援活動に前向きなのでしょうか?」
鷹野「今は多くの企業がボランティア休暇を増加する姿勢をとっています。現地に行けば必ず何かを感じることができますので。」
三井「支援活動に企業を巻き込むにはどのようなメリットを提示したらいいと思いますか?」
鷹野「基本その地区ごとで提示すべきメリットは変わると思いますが、どの地区にも共通していることは、住んでいる方が高齢者が多く、若者が少ないということです。現地はまさに日本の高齢化社会の先にある姿なのです。その社会でいかに事業を展開することができるのかが現地のみならず、日本の今後を左右するものになるということへの挑戦意欲が支援しようとする企業にとっての魅力ではないかと思います。」
三井「経済を回すとともに、東北ならではの自然や漁業をもう一度立て直せるかも今後の復興に大きな影響を及ぼすと思います。私たちが支援している陸前高田市広田町では船を失い、しかたなく農業をしている人がいるんですが、やはり『海の男が畑仕事をすることは情けない』と言っています。」
鷹野「そうですね。漁業や自然に関しては同じ形に戻すことは難しいですが、それを軸にして考えていくことが現地の特徴を活かすことになると思っています。」
三井「津波で海が底からひっくりかえったことや、流されてきた瓦礫がまだ撤去できずにいることで海水がとても濁ったままです。だから魚が寄ってきません。海を元の状態に戻すことがとても重要だと現地の方も言っています。」
鷹野「将来の姿を見据えてボランティアも一緒に瓦礫撤去から町内清掃まで、日々の積み重ねしかないですね。」
━これからのリーダー像・・ボランティアではない何か別の呼称・・・若者への期待・・
三井「よくボランティアが瓦礫撤去に参加しすぎると、現地の方の瓦礫撤去の雇用を奪うという声があるのですがそれについてはどう思いますか?」
鷹野「それはコーディネート役がしっかりと機能しているかですね。現地の状況とボランティアの受け入れをコーディネートする人物だけでなく、支援する企業のコーディネートも必要になってくると思います。そうでないと、永遠に効率の良い支援が出来ません。しかし、今はそのコーディネーターが不足していることは事実です。」
三井「やはり現地でのコーディネーターはリーダー的存在の人、例えば町長さんなどがすべきなのでしょうか?」
鷹野「必ずしもそうでなくていいと思います。表に立つリーダーはいるべきだと思いますが、そのリーダーの後ろで動く人間がコーディネーターになったほうがいいでしょう。黒子に徹して、陰でみんなを盛り上げるような人がいいと思います。」
三井「わりと時間のある学生や、主婦の方がコーディネーターになっても面白いと思います。」
鷹野「そうですね。あと県外の人でも良いと思います。」
三井「そのようなコーディネーターを育成する機関などはないのでしょうか?」
鷹野「あっても良いと思います。これから日本に求められるリーダー像はそのようなものである気もします。表で立っているリーダーだけではなくて、強い当事者意識を持って陰で支えるタイプのリーダーが必要です。リーダーはいつも一人ではなく、大勢いていいと思います。」
三井「これからは地区ごとでのコーディネーターの働きが復興へ大きな影響を及ぼしてきますね。」
鷹野「出来ればそのコーディネーターは若い人にやってほしいと思います。現地の方とコミュニケーションが取れて、ニーズの把握が出来て、支援団体への交渉も出来る。そんな若者が今の時代必要であると思います。そうして、そこの地区でいつか事業を回せるようになってほしい。若い人が地方で起業することで地方にも魅力を感じて過疎化が進んでいることへの課題解決にもなると思います。」
三井「そのコーディネーターはきっとボランティアではない何か別の呼称で呼ばれることになると思います。まだ、その呼び名は分かりませんが、きっとその存在はこれから先の日本を救うキーパーソンになると思います。」
鷹野「はい。そのような次世代のリーダーが出てくることを期待しています。」
収録を終えて・・・
現地ではぞくぞくと仮設住宅に入りだして、これからどのようなニーズが必要となっていくのか。今回の対談を聞いて、それはコーディネーターだと思った。
現地の方や支援団体とコミュニケーションが可能な、そんな若者が復興の舵を取るべきである。
はじめは小さい地区でも良いと思う。町長の後ろについて多くのことを学び、現地の方と共に復興を考え、ニーズを埋めてくれる支援団体や企業に掛け合い、実行に移すことができる存在が必要である。
そしていつの日か、その若者がその地区に再び光を照らす。ボランティアではない呼称がつくのなら、きっとこのような意味が込められた名前で呼ばれるはずである。
いずれリーダーになるためのリーダーが今求められているのではないだろうか。
*この対談企画(ミツメル)は定期的に行っています。過去の対談記事はこちらからご覧ください。
・支援活動をしている若者たちの対談企画 ミツメル~ぼくたちの空はつながっている~
第一回ミツメル~ぼくたちの空はつながっている~「被災地との出会い」
第二回ミツメル~ぼくたちの空はつながっている~「被災地にあって東京にないものとは」
第三回ミツメル~ぼくたちの空はつながっている~「被災地で見つけた希望」
第四回ミツメル~ぼくたちの空はつながっている~「震災から四ヶ月たって今、思うこと」
・支援活動をしている若者と大人の対談企画 ミツメル~いま伝えたい、大切なこと~
第一回ミツメル~いま伝えたい、大切なこと~「被災地で見つけたかけがえのないもの」
語り手 今一生(フリーライター) 安田菜津紀(フォトジャーナリスト) 三井俊介(法政大学)
・現地の方との対談を行った特別企画
番外編ミツメル 「広田に集まる理由」
語り手 藤田芳夫(元陸前高田市広田町コミュニティセンター事務局長) 佐々木真ノ介(元市の臨時職員 霞ヶ関を辞めて故郷である広田町に戻り市の臨時職員を務める)
三井俊介(法政大学)
(オルタナS特派員 池田真隆)