SNSにより声なき声が社会を変えるエンジンになっている。ハッシュタグ付きの投稿で、「セクハラ被害」「人権無視の校則」「障がい者への差別・偏見」などをなくしていくキャンペーンが広がっている。胸に閉じ込めていた辛い思いが続々とSNS上で可視化されたことで、社会の闇を照らしている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

アリッサ・ミラノがツイッターに投稿した文章

■元電通クリエイターもセクハラ

「#MeToo」は、セクハラや性暴力を受けた女性たちをエンパワメントするために生まれたハッシュタグだ。このキャンペーンを企画したのは、黒人女性のタラナ・バーク氏。2007年ごろに始まった運動だが、今年に入り火が点いた。

きっかけはハリウッド女優のアリッサ・ミラノ。彼女は自身のツイッターで、「もしあなたが性的嫌がらせや虐待を受けたら、このツイートに『Me too』とリプライして」と投稿した。この投稿が反響を呼び、1日で女性たちから5万件以上の返事が集まった。レディ・ガガら有名人も反応した。

「恋におちたシェイクスピア」や「シカゴ」などで知られる大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏が若手女優に性的関係を迫ったことが明らかになり、非難が殺到している。

日本でも17日、作家・ブロガーのはあちゅうさんが、電通で勤務していた2009年にクリエイターの岸勇希氏(現在、刻キタル代表)からセクハラとパワハラを受けたことを証言し、SNS上で反響を呼んでいる。岸氏ははあちゅうさんの証言の一部を認め、謝罪した。

■「ブラック校則」をなくせ

「黒髪や天然パーマの生徒は地毛証明書を提出」「カップルは一緒に帰ってはいけない」「ハーフパンツをスカートの下に履いていると男性教員の前で脱ぐように指示される」――人権を無視したようなこれらの校則を、「ブラック校則」と名付けて、SNS上で集める動きが始まった。

これは、子ども支援を行うNPO法人キッズドアらNPO有志による運動。SNS上で「#ブラック校則」「#こんな校則いらない」とハッシュタグを付けてブラック校則の体験談を集めている。今後は生徒へのヒアリングなどを経て、校則の見直しを要求していく。

今年10月、大阪府の女子高校生が茶色い髪を黒染めするよう教師らから指摘を受けた。生徒の髪は地毛であったが、教師らは染めることを強要。その結果、生徒は不登校になってしまった。この問題を機にキャンペーンは立ち上がった。

14日から、署名サイト「change.org」で、ブラック校則の見直しを求める署名を集めている。宛先は林芳正文科相。現時点で26919人の署名が集まっている。

昨年7月、神奈川県相模原市の知的障がい者施設「津久井やまゆり園」で起きた大量殺人事件に対して、障がい者を励ますキャンペーンもSNS上で展開された。同事件では犯人が、「障がい者は生きている意味がない」という趣旨の発言をしたことで、波紋を広げた。

キャンペーンの発起人は難病患者で大学院生の大野更紗さん。「#friends4disability」というハッシュタグ付きの投稿を呼び掛けた。

ファッションレボリューションのキャンペーンに参加した、俳優の伊勢谷友介さん

服の製造過程を可視化する国際的なキャンペーン「ファッションレボリューション」は90カ国7万人が参加するまでに成長した。このキャンペーンのきっかけは、2013年に起きたバングラデシュの縫製工場「ラナ・プラザ」の崩壊事故。英国・ロンドンに住むキャリー・サマーズさんが呼びかけた。

洋服を裏返しタグの写真を撮影し、その服のブランド名と「#whomademyclothes」というハッシュタグを付けて、SNSで投稿するものだ。

SNSでは友人や知人、家族だけでなく、上司や部下などさまざまな人とつながっている。社会問題を投稿することに抵抗感を覚える人は少なくないだろう。そこで、キャンペーンにすることで投稿へのハードルを下げた。SNSが浸透した現代だからこそできる社会変革の形だ。


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