京都市は2016年にソーシャルイノベーションクラスター構想を掲げました。「社会貢献」や「信頼」、「関係性」といった「目に見えない価値」を経済で循環させていくことで、社会をよくしていこうと宣言して、産官学金融協働のソーシャルグッドなプロジェクトやイベントなどをいたるところで行ってきました。(詳しくはこちら

今回は、WorldShift コミュニケーターであり、環境番組の放送作家、京都造形大学の教授でもある谷崎テトラさんと、日・中・韓の芸術文化や伝統文化などの促進や交流を目的とした『東アジア文化都市2017京都』を契機に、チェンジメーカーとなる創造的実践者を紹介するメディア『PLAY ONを立ち上げた、一般社団法人リリース共同代表の桜井肖典さんを訪ねました。

2018年2月4日、京都造形大学内にある京都芸術劇場 春秋座で「Worldshift京都フォーラム2018」が開催されます。観光だけでなくソーシャルムーブメントもますます盛り上がりを見せる京都。この動きの渦中にいるキーパーソンのお二人に、変わりゆくこれからの時代に向けて必要な視座、意識のあり方についてお話を伺います。(*この記事は4本あります。こちらは(2/4)の内容となりますので、まだ(1/4)から見ていない方はこちらから読んでいただくことをおすすめします。

◆テクノロジーの進化によって迎える新しい時代のためのマインドセット『WorldShift』

桜井:今回のフォーラムでは、どんなことを扱うんですか?

テトラ:今回は、「まなぶ」「つながる」「うごく」がテーマになっています。まずは3つの危機に対して、新しいパラダイムを持っている人に話を聞こうと思っています。「まなぶ」のパートでは、東北大学准教授である佐藤正弘さんをお呼びしています。

彼は「エコロジー経済学」の翻訳者でもあります。80年代以降の地球全体のキャパシティを前提とした経済のあり方についてもっとも知見がある人の一人で、金融庁では「排出権取引」、環境省では「地球サミット」を扱っていらっしゃいました。『地球サミット2012 JAPAN』でも彼が代表で、僕が副代表だった。それに彼はAIの専門家でもあるんです。

地球環境は2012年地球サミットの段階では、かなり絶望的だったわけです。おそらく人類の善意を終結させても間に合わないし、いいことをしようとしても経済活動の方が上回ってしまう。でも、この5年間のテクノロジーの加速度的な進化によって、もしかしたら地球は大丈夫かもしれないという可能性が出てきた。

例えば、何かを船で輸送するときの波の状態とか気象状態とかを事前に予測でき、最適化された航路をAIによって導き出すことができる。それによって資源が50%削減できるんです。人間がやると何時間もかかるゴミの分別の作業も、Iotによって細かく分類して資源化することができる。

それから、食品の廃棄物の問題。東京では年間およそ26万トンが捨てられていて、その一方で、世界中で飢餓人口はおよそ8億人が苦しんでいますが、これもテクノロジーのおかげで、その日の天気とか人口動態を計算して、最適な量を生産できるんですよ。

もちろんテクノロジーだけではなくて、そこに我々のマインドセットが結びつくことが必要ですけどね。そのマインドセットを促すのが『WorldShift』なんです。こういう世界をつくりたいという気持ちが一つになるとパラダイムシフトが可能になる。

AIというと将棋が勝った負けたとかね、そういう話ばかりでそれは全然違う。僕たちの社会が根本的に変わるんだってこと。僕が開いている学びの場『テトラゼミ』でもこんな話をしていますが、これは「Society 5.0」とも言われてますよね。

桜井肖典さん(左)谷崎テトラさん(右)

最近では、AIで50%の職業が失われると言われて、戦々恐々としているけれど、自分のことだけを考えるとそうなるんですよ。けれど、社会全体の生産性は落ちない。つまり仕事の量は半分になって生産性が落ちないってことは、社会全体でワークシェアがちゃんとできていれば半分の量で文明を維持できるということなんですよ!

あとは、テクノロジーで上がった生産性で得られたものをいかに社会に分配するか、そこでベーシックインカムが重要な状況になっています。昨年に世界中でその社会実験が始まりました。その辺りのヨーロッパの状況を説明してくれるのが佐々木重人さん

今、資本主義のあり方が変わりつつあって、マネーの資本主義から関係資本や信頼資本、もしくは自然資本と呼ばれるあり方へとこれから変わっていく。信頼による資本主義が最大化されていく社会を応援していく財団の仕組みをつくったのが、公益財団法人信頼資本財団 理事長/アミタホールディングス株式会社 代表取締役の熊野英介さん。今回は社会のあり方についてお話いただきます。

そして「つながる」のパートでは電通の並河進さんをモデレーターに、文明哲学研究所の田中勝さん、映像作家の丹下紘希さん、勉強家の兼松佳宏さん、ミラツクの西村勇也さんでトークセッションを行います。

「うごく」のパートでは、社会を変えるために心の不動の点をつくるという意味で、心のイノベーションについて、京都でもっとも古い禅寺である建仁寺両足院の副住職である伊藤東凌さんにお話いただきます。

さらに、スウェーデンからはバートゥーラさんという方もいらっしゃいます。彼はインパクトムーブメントをやってきたキーパーソンで、世界300箇所のムーブメントをつなげてきた人。彼は欧米のキーパーソンとはつながっていますが、日本とのつながりがないと話しています。だから「WorldShiftフォーラム」を日本のキーパーソンとつながれる場にしたいんです。

極め付けは、今回のフォーラム全体の司会に、ワークショップファシリテーションの第一人者である京都造形芸術大学副学長の本間正人さん大江亞紀香さんがつとめてくださいます。

◆この続きはこちら

【WorldShift 京都フォーラム】

https://wskf2018.peatix.com/

2018/02/04 (日)13:00 – 18:00@京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)

http://k-pac.org/

谷崎テトラ:
京都造形芸術大学教授/放送作家 1964年生まれ。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。プロフィール詳細はこちら:http://tetra4.wixsite.com/home/profile

桜井肖典:
1977年生まれ。2000年よりデザインコンサルティング会社を経営後、企業や自治体との事業開発を経済における広義のアートと位置づけ、京都を拠点に年の半分近くは国内外を移動しながら「芸術と社会変革のあいだ」で、ひと・もの・ことの営みを幅広くプロデュースする社会芸術家であり起業家。共著に『青虫は一度溶けて蝶になる(春秋社)』がある。一般社団法人RELEASE; 共同代表、オンラインメディア『PLAY ON』編集長、京都市ソーシャル・イノベーション研究所コミュニティ・オーガナイザー。http://release.world

取材協力:shiny owl cafe


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