暖かくなり、小鳥のさえずりを耳にしたり、姿を目したりする機会が増えてきました。ツバメは、巣作り・子育ての真っ只中ですね。皆さんの住んでいる場所では、どんな野鳥が姿を見せてくれますか?(JAMMIN=山本 めぐみ)

一方で、「最近、野鳥を見ることが減った」という印象を抱いている人も少なくないのではないかと思います。80年余にわたり、野鳥と生息地を守るため、自然保護に取り組んでいる団体を紹介します。

◆野鳥の立場から自然を保護し、人間との共存を目指す

子育て真っ最中のツバメ。私たちの生活の中で身近にあった、馴染み深い光景だ(写真/佐藤信敏)

「公益財団法人日本野鳥の会」(東京)は、野鳥の立場から、野鳥とその生息地を、また絶滅危惧種の鳥たちを守るために活動する公益財団法人です。

「地球の歴史のなかで、この数世紀は“とにかく人間が住みやすいこと”が第一となってしまい、野鳥をはじめとする生きものたちや貴重な自然が失われている」と話すのは、日本野鳥の会会員室室長代理の景山誠(かげやま・まこと)さん(47)。人間のそばで、人間と共に生きてきた歴史のあるツバメやヒバリなどの将来を案じます。

日本野鳥の会の景山さん(左)と吉倉さん(右)

日本野鳥の会が主に行なっているのは、野鳥の保護活動と普及啓発活動、そして調査活動の3つ。

「保護活動に関しては、国などの保護事業からこぼれてしまう野鳥の保護に力を入れている」と話すのは、同じく日本野鳥の会会員室の吉倉浩子(よしくら・ひろこ)さん(49)。

日本には約600種の野鳥がいますが、現在絶滅危惧種とされている野鳥と、将来的に絶滅危惧種になりうる野鳥、また減少してしまう心配があるとされる野鳥を合わせると、その数は全体の4分の1にものぼるといいます。

◆国からは重点的に守られていない絶滅危惧種を保護

絶滅危惧種「シマフクロウ」の繁殖を助けるために、北海道の野鳥保護区内におよそ20㎏もの巣箱を設置する日本野鳥の会のレンジャー

「たとえばアホウドリやヤンバルクイナなど、絶滅寸前の野鳥に対して、国は優先的に対応する。しかし、保護を必要とする野鳥たちの種類は多い。そうすると当然、対応が後手に回ってしまう野鳥が出てきてしまう。

知らない間に数が減って気が付いたら絶滅の一歩手前だった、という状況を避けるため、国からはまだ重点的に守られていない絶滅危惧種の保護に取り組んだり、緩やかに絶滅の恐れのある状態へと向かいつつある野鳥を調査し、現状を知ってもらい、その未来を変えるために環境を整えていくことが私たちのひとつの使命」(景山さん)

北海道東部の野鳥保護区周辺で持ち上がった大規模風力発電施設建設に関し、絶滅危惧種「オオワシ」や「オジロワシ」への影響を調べるために調査を行うレンジャーたち(2012年2月)

日本野鳥の会は、希少な野鳥の生息地を買い取りなどによって恒久的に守る「野鳥保護区」や、自然環境の保全や環境教育を目的とした「サンクチュアリ」と呼ばれる場所の管理・運営を行っています。

「これらの場所には『レンジャー』と呼ばれる専門の職員が常駐していて、保全のための調査や自然環境の管理を行いながら、自然の魅力や大切さをより多くの人に伝えるためにも活動している」と景山さん。実は景山さんも、兵庫県姫路市と北海道根室市にあるサンクチュアリで、レンジャーとして活躍していました。

◆変わりゆく自然の中で、野鳥と向き合う

北海道日高地域にある「持田野鳥保護区シマフクロウ日高第1」にて、雪道をひたすら歩き、いけすまでシマフクロウの餌となるヤマメを運ぶレンジャー

レンジャーの仕事について、景山さんに聞いてみると、次のような答えが返ってきました。

「自然が相手なので決して楽ではないが、やりがいのある仕事。北海道のレンジャーたちは、野鳥保護区内に生息している絶滅危惧種の『シマフクロウ』を守るために、−20℃近い寒さになる真冬の極寒の日も、雪に埋もれた山奥を、エサとなる生きた魚をソリで引いて、設置したいけすに届けることもある。自然のサイクルが一度どこかで途切れてしまった時、この部分を補うには、莫大な労力と資金が必要になる。この作業を無償のボランティアでやり続けることは容易ではない。でも、だからこそ、国がカバーしきれない部分を私たちが担い、地道な努力を積み重ねながら野鳥を守っている」(景山さん)

◆野鳥は、自然環境の変化を知る「バロメーター」

生態系ピラミッド。頂点にワシやタカなどの猛禽類が存在する(イラスト/DLOP(JAMMIN))

「野鳥は自然を知るための『バロメーター』。野鳥が減っていることは、日本の自然が追い詰められているということを意味する」と吉倉さん。

「食物連鎖を表す生態系ピラミッドをイメージしてもらうとわかりやすいが、この生態系ピラミッドの上の方にいる野鳥が見られなくなっているということはつまり、生態系のバランスが崩れ、彼らが生きていくために必要な植物や小動物たち、またそういった環境を提供する緑豊かな環境が十分ではなくなってきているということ。たとえば仮に一羽のタカが、年間に数百羽の小鳥を食べるとする。その一羽の小鳥は、年間10万匹もの虫を食べる。ではその10万匹もの虫たちを養う草木の量は…、このように考えていくと、緑豊かな環境がどれほど多くの生きものたちの命を支えているか、少し想像ができるのではないだろうか」(吉倉さん)

お二人に、特に思い入れのある野鳥をお伺いした。写真左は、景山さんチョイスの「シマフクロウ」。写真右は、吉倉さんチョイスの「ヒヨドリ」

「『毎年こんな鳥が見られていたのに、いなくなってしまった』という場合、何かしらその鳥に必要な環境が失われてしまっているということを意味する。人間の目から見ると一見何も変わっていないように見えることも、鳥の目線から、環境が変化していることを認識できる」(景山さん)

お二人の話を伺いながら、自然を破壊し、環境の変化を主導する私たち人間に対し、野鳥たちがその未来に警鐘を鳴らし、気づきを促してくれているように感じました。

◆身近な野鳥「ツバメ」も減っている

多くの人に野鳥や自然に親しんでもらうため、全国各地の約90の連携団体が「探鳥会」(バードウォッチングの会)を開催している。経験豊かなリーダーが、初心者にもわかりやすくバードウォッチングの楽しさを伝えてくれ、野鳥を通じて自然と触れ合うことができる

私たちの身近なところで生きる野鳥「ツバメ」。5月に入り、子育てを目にする方も増えてきたのではいでしょうか?実はツバメも、その数が減りつつあります。

「最近、ツバメが減っているのではないか」という懸念から、日本野鳥の会は2012年より「消えゆくツバメをまもろうキャンペーン」というキャンペーン実施しています。

インターネットなどを通じ、全国各地からツバメの生息状況や、毎年の子育ての状況を知らせてもらうというこのキャンペーン。調査していくと、都市部でのヒナの巣立ち数が、農村部と比べて減っていることがわかってきたといいます。

「消えゆくツバメをまもろうキャンペーン」の2018年のツバメの子育て状況調査のページ。全国各地から投稿があり、ツバメの子育て状況を確認できる。パソコンやスマートフォン、タブレットから、また郵送やファックスで誰でも参加可能

「通常ツバメは6個ほどの卵を産むが、都市部に作られた一つの巣から巣だったヒナは平均3.89羽で、4羽に満たないということがわかった。ちなみに郊外や農村部の場合は4.29羽で、都市部のほうが0.4羽分少ない。一つの巣から巣立つヒナが4羽以下になると、計算上、長い年月をかけて徐々にツバメが減少していく危険性があると考えられる」(吉倉さん)

都市部のツバメの巣立ち数が少ない原因を調べていくと、餌となる虫が捕れる自然が少ないというほかに、「汚いから」「病気が心配」という理由で、人間がツバメの巣を駆除しているという事実が明らかになってきたといいます。

日本野鳥の会が発行する小冊子『あなたもツバメ子育て応援団』では、フン受けの作り方や、巣台の設置の仕方などが紹介されている。「ツバメってこんな鳥」ということが分かる内容になっていて、小学校の教材や、図書館資料としても申し込みがあるそう

「ちょうど今の時期、ツバメは子育てをする。ヒナが生まれてから巣立つまではたったの3週間。この期間だけ、やさしく見守ってほしい」と吉倉さん。日本野鳥の会は、2013年に小冊子『あなたもツバメ子育て応援団』を発行しました。

この小冊子には、ツバメの基礎的な情報や、カラスからツバメの巣を守る方法、さらに巣を落とそうとしている人にはどう対応したらいいかまで、ツバメの子育てを応援するために役立つノウハウが掲載されており、希望者には無料で届けてくれます。

◆ツバメの子育て見守りを応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は日本野鳥の会と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

「JAMMIN×日本野鳥の会」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円が日本野鳥の会へとチャリティーされ、ツバメの子育てを見守る応援団を増やすため、小冊子『あなたもツバメ子育て応援団』を新たに全国2,000人の人に届ける送料となります。

「JAMMIN×日本野鳥の会」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色、価格は3,400円(チャリティー・税込み)。他にパーカーやマルシェバッグ、キッズ用Tシャツなどもあり

JAMMINがデザインしたTシャツに描かれているのは、豊かな自然を飛び回るツバメの姿。当たり前のようで、決して当たり前ではない。貴重なこの美しい姿と共に生き、そして後世にも残していきたい──。そんな思いが込められています。

チャリティーアイテムの販売期間は、バードウィークにちなんだ5月14日〜5月20日までの1週間。JAMMINホームページより購入できます。

JAMMINのキャンペーン特集ページでは、日本野鳥の会の活動について、お二人の詳しいインタビューを掲載中!こちらもぜひチェックしてくださいね。

野鳥の立場から、自然環境を守る。「野鳥と人間が共存する社会」を目指して〜公益財団法人日本野鳥の会

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。2018年3月で、チャリティー累計額が2,000万円を突破しました!

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