世界自然遺産である、北海道「知床」に今、変化が起こっている。知床斜里の駅舎にはオシャレなポスターがずらりと並び、シンボルマークのクマ「トコさん」が至る所で顔をのぞかせる。ブックレットが東京・代官山のTSUTAYAに置かれるなど、その「オシャレ度」は高まりつつある。「知床ブランディングプロジェクト」を行う、NPO法人知床斜里町観光協会を取材した。(武蔵大学松本ゼミ支局=糸井 明日香・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

PO法人知床斜里町観光協会の喜來さんと斜里町役場の三嶋さん

知床は北海道の北東に位置する、オホーツク海の南端に突き出した半島。2005年にはユネスコ世界遺産に登録されており、日本で3カ所しかない世界自然遺産の1つである。

雄大な自然が美しいまま残る知床は、その誇るべき「大自然」を大きくプロモーションしてきた。知床国立公園、知床岬、知床五湖、冬には流氷、春になればヒグマに出会うことだってある。

観光客の減少に苦しむ諸地域に比べ、これほど豊かな自然を有する知床は、観光客の獲得には苦労しないだろうと、そう思うかもしれない。しかし、そんな知床でさえ「自然だけではやっていけない」という焦りを募らせている。2015年、自然「だけじゃない」知床をアピールしたい、そんな思いからスタートした「知床ブランディングプロジェクト」は、今年で3年目を迎えた。

観光協会と役場の協力によって始まったこの活動、まず取りかかったのは、ポスターやパンフレットの刷新だった。

ポスターの刷新

知床の昔ながらのポスターやパンフレットは、筆で「知床」と書いて、空撮で知床半島の写真を取ったものだった。

以前のパンフレット

美しい自然が満載な知床の魅力を伝えているものの、この写真を見て知床に来た人が、実際にヘリコプターに乗ってその景色が見える場所に行くのは難しい。知床の先端、写真にも写る知床岬に行きたいと思っても、船でなければ行けず、普通の人は上陸できないことになっている。今まではそれでも良かったが、段々飽きられ、人も減ってしまったのだという。

そこで、外部の力を借りて、新しい知床のイメージを作ることにした。それは、都会的で、オシャレで、ちょっとくだけた「SHIRETOKO」。

新しいパンフレット(左)と新しいブックレットの表紙

写真は著名な写真家、石川直樹氏が手がけている。知床半島に変わって大きく切り取られたのはエゾシカだ。地元の人にとって、エゾシカは見慣れた動物。「クマならばまだしもエゾシカ、こんなものをポスターにしてどうするんだ」そんな声があがったという。

■プロに任せる勇気

地元の人からしたらなんでもないただの日常が、都会の人びとには刺さる。それがわかっていた外部のクリエイターは、「フキノトウだけ」「車窓からの景色」「山と女子高生」「漁師の笑顔」「知床の家族」など、突き抜けた写真を提案した。

新しいブックレット(中身)

しかし、これは大きな方向転換。簡単にできることではない。ブランディングに使われるのは行政の資金だ。「こんなのが本当に売れるのか」「今までのままで良いのではないか」といった声は少なくなかった。

ブランディングはすぐに結果が見えるものではない。では、どうして踏み切ることが出来たのか。それは、町長や副町長の理解があってこそだったという。「一度プロに任せてみよう」というその勇気が、知床ブランディングプロジェクト進行の鍵となった。今では、石川直樹、石川竜一、鈴木理策、原耕一など、名だたるクリエイターが知床ブランドを盛り上げている。

イメージキャラクターのトコさん

知床というブランドが広く浸透し、それが見えるような結果に繋がるのにはもう少し時間がかかるだろう。どうやって人に来てもらうか、どうやって人と人を繋ぐか。日本の多くの地域が抱える問題に、知床はブランディングという手法で挑戦を続ける。まだまだこれから、と語る彼らの今後に注目したい。


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