平成27年トルコで開催されたG20雇用労働大臣会合において「大きすぎる格差は成長の足を引っ張る」という文言が決議されました。現在7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われ、政府は上昇傾向にある「子どもの貧困」を問題視してはいるものの、普通に生活をしていると格差を実感することはなかなかありません。(池本 修悟=一般社団法人ユニバーサル志縁センター)
しかし、格差を如実に表しているのが進学率で、児童養護施設の子の高校卒業後の進学率は生活保護世帯やひとり親家庭の子の大学等進学率よりも低くなっています。
進学できないことで進路に差が生じ、収入面での格差が生じ図に示したように貧困の状態が次世代に連鎖する現状が生じてしまいます。
この最も進学率の低い児童養護施設を含め里親といった公的な支援のもとで子どもたちを育てていくことを「社会的養護」と言います。
平成29年の児童相談所への虐待通報件数は13万件を越え、支援の充実のため、東京都では練馬区を除く22区で新たに児童相談所が設置されることになりました。
このような虐待等を受け通報された子どものうち4%が現在社会的養護のもと暮らしており、総数は約4500人となっています。平成28年度を見てみると、12万人のうち4%の4,845人が社会的養護のもと、暮らすことになりました。
ただ、社会的養護を受けたから一安心ということではなく、頼れる家族がいない状態はそう変わりません。しかも先ほど述べたように進路によって収入面での格差に加え、早期退職などで収入減を絶たれる人も多く存在し、生活が成り立たず、女性では性産業に従事する人、男性でもホームレスなどになり、中には自ら命を絶つ人もいます。
家族から虐待を受けるという一番厳しい状況にいた人たちが、社会人になってからも生きづらさを抱え1人で社会生活を営んでいく現実を知った時に、何とかしなければと思う人はいるのではないでしょうか。
このような現実のもと暮らす若者に寄り添い支援している児童養護施設やNPO法人などの心ある人たちは存在します。しかし、その活動は「制度」でカバーしきれているわけではなく、いわば心ある人たちの「持ち出し」の資金と情熱で成り立っています。
そのような現実を変えるために、2016年一般社団法人ユニバーサル志縁センターが開催した「社会的養護下にある子の自立を考える研究会」を通じ有志が集まり、2017年、首都圏若者サポートネットワーク(顧問 村木厚子、運営委員長 宮本みち子)が立ち上がりました。
現状生活協同組合の組合員カンパやクラウドファンディングを通じて「若者おうえん基金」を造成し、当事者に寄り添いながら持ち出しで支援を行っている人たちに助成を行い、当事者への就労キャリア支援も準備しています。
更に助成先の支援者が伴走支援を行うプロセスを研究者によって調査分析することで現状の制度の課題を明らかにし、制度の改善に資する政策提言を行っていくことも活動として行っていく予定です。
他の多くの社会課題と同じように、この社会的養護を巣立った後の子ども・若者をとりまく問題も、一般にはほとんど知られていません。読者の皆さんも初めて知った方が多くいらっしゃると思います。
関心をもっていただけたようでしたら、みなさんの周りの方にもこのプロジェクトをお知らせいただけると幸いです。